コロナショック「日本株大暴落」を覚悟する理由 アテにしていた五輪がなくなるのは相当マズい

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そうならないことがいちばんいいのですが、リスクとして日本経済にはこれからさらに2つのショックが起きる危険性があります。1つはこの2週間が頑張りどころだといわれているコロナウィルスの封じ込めが失敗した場合。中国と同様、爆発的な感染拡大により日本の状況が悪化するリスクです。そうなるとNY市場と違い、自国の経済が長期停止することになるため、今よりも一段の株価の悪化は避けがたいことになります。

もう1つのショックは、これは本当に起きてほしくないのですが、日本でこれからパンデミックが起きた場合、それが数カ月続くと、時期的にオリンピック中止のリスクまで浮上してくるということです。

そもそも我が国の株価はこの夏のオリンピック景気が織り込まれた水準だったわけです。その経済効果は30兆円と計算されていました。その中で過半を占めるのがオリンピックに向けたインフラ建設による経済効果で、この投資についてはすでに実現しているので心配はいりません。問題はオリンピック開催によって加わるはずだった12兆円のインバウンド消費効果で、この数字はオリンピックが中止されると日本経済にダイレクトなマイナスをもたらします。

日本の場合は影響が1年で済まないかも

日本の場合は影響が1年で済まないかもしれない。理由はそもそも昨年10月の消費増税で景気が悪化しはじめているからです。それをオリンピック景気で乗り越えようとしていたのにオリンピックがなくなってしまったらどうなるのか? そしてオリンピックがなくなる場合、すでに新型コロナで日本経済が大打撃を受けているので、それがどれほど甚大なのかが問題になります。

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それらの新たなリスクを考えると日本の株式市場は悪いほうに1段階転がれば日経平均1万9000円割れまで起きる可能性がある。

これは1月17日を基準に考えると20%以上下落した水準ですが、リーマンショックのときのように名だたる日本企業が軒並み大赤字になるという、その覚悟をしながら状況を見守る必要があるのだということです。

ただ本当にオリンピックが中止になれば景気の前提が完全に変わるうえにパニック売りも起きますから、それで済むとは思えない。投資家としての私はびくびくしながら株式市場を見守っています。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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