海運バブルの後遺症、止まらぬ供給増加で熾烈な消耗戦へ
発注停止、返船… 供給過多に大ナタ
供給過剰に歯止めをかけようと、各社とも減船を加速させる。日本郵船ではコンテナ船の新規発注を停止。契約満了を迎えた用船を順次船主へと返船するほか老齢船の処分も進め、09年3月末で120隻あったコンテナ船を15年度末までに半分の60隻に減らす荒療治を施す。一方、11月には約40年ぶりとなる巨額の公募増資を発表。構造改革と財務強化を両面で推し進めている。
川崎汽船も大ナタを振るう。コンテナ船事業の構造改革で今期に500億円もの特損を計上。違約金を支払って用船の期限前返船を行うほか、発注済みのコンテナ船をバラ積み船へ変更し、隻数削減を図る。ただ、好況を前提とした大量発注は、石油タンカーやケープでも同じ。すでにタンカーは市況運賃が空前の安値水準で、どこも赤字運航を余儀なくされている。ケープは今期、世界で120隻が竣工したのにもかかわらず、中国が年2億トン(200隻分の需要創出)も鉄鉱石輸入を増やしたため、需要過多で運賃相場は8万ドル台まで上昇。ほぼ唯一ともいえる稼ぎ手だ。だが来期はさらに180隻の竣工があり、スポット運賃の値崩れが確実視されている。
業績回復の足かせとなっているコンテナ船部門は、3社とも2期連続赤字。運賃の修復次第だが、強烈な供給圧力が緩和されないかぎり、今後の部門黒字化は至難で、「そのうちコンテナ船部門を切り離す大手も出てくるのではないか」(海運会社幹部)との声も聞かれる。供給過多というバブル後遺症をどう乗り切るか。足元の景気回復は緩慢で、ともすれば二番底到来の懸念もある。赤字の消耗戦はさらに熾烈化し、舵取りの難易度が高まりそうだ。
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