海運バブルの後遺症、止まらぬ供給増加で熾烈な消耗戦へ
ところが、昨年度後半以降は中国から欧米への家具輸出など荷動きが急減し、それに伴って運賃も下落。今上期、部門赤字で最大額は川崎汽船の471億円。欧州航路は運賃がピーク時の半分まで下がり、上期は赤字額がケタ一つ増えた。同社は荷主と運賃修復(値上げ)を毎月交渉、ピーク比7割まで戻したが「採算線まで持っていくのは大変」(前川弘幸社長)。というのも、需給調整のために港につなぎ留めるなど、不稼働のコンテナ船は業界全体で約1割ある。運賃が採算線に近づけば、係船状態の船が海原へ繰り出すことが予想され、市況が再び崩れかねない。北米航路の値決めは年1回。期初に定めたピーク比7割の低水準のままで、こちらも赤字運航を強いられており、ほか2社も状況は同じだ。
3社ともコンテナ船は下期も赤字の見通しで、川崎汽船は通期740億円、日本郵船は同500億円の赤字を覚悟している。しかも、川崎汽船で365億円、日本郵船が700億円ものコストを削減してもなおこれだけ赤字なのだから、不振の深刻度合いがよくわかる。
「4~5年は回復しない」。日本郵船の甲斐幹敏経営委員があきらめ顔なのは、現在でも、世界全体で約3割もの供給過剰状態にあるばかりか、「荷動きの回復を上回る供給増加が今後もある」(甲斐氏)からだ。
原因は好況の名残だ。世界のコンテナ船各社は、米国の住宅バブル崩壊前の好況を前提にこぞって船を発注した。結果、12年までにコンテナ船の運搬能力は現在の1.5倍になるとみられている。通常、コンテナ船は着工から竣工まで7~8カ月程度。ところが発注が殺到したために、発注から竣工までは4~5年かかる。つまり、米国住宅バブルによる世界的好況を前提にした4~5年前の大量発注が、世界中のコンテナ船業者のクビを絞めている。
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