「日本版ムーク」が秘める巨大インパクト 産学連携で進む新たな教育事業とは?

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最大手「コーセラ」も収益化には苦労している

ムークの課題は、事業の収益性をどのようにして確保するか。600万人の会員を集めたコーセラも収益化は難しいとみられており、優秀な学生の人材紹介や修了証の有料発行など、さまざまな収益モデルを模索しているのが現状だ。

米国ではソーシャルベンチャーの一種として位置づけられており、コーセラはベンチャーキャピタルから、エデックスはハーバード大とMITから、資金を調達している。

会員に大企業が並ぶJMOOC

一方、日本版ムークは会員名簿にずらりと企業の名前が並ぶ。年会費500万円の特別会員にはNTTドコモや住友商事といった大企業が名を連ね、年会費が1口10万円の正会員には大学よりも企業のほうが多い。

「日本企業やアジア企業にとっては、オンラインラーニングとして従業員研修の面でもメリットがある」(関係者)。社員のスキルアップ研修や海外子会社での語学や製造工程などの映像教育に活用できれば、会員企業にとってもメリットがあるというわけだ。

「日本では米国のようにベンチャーキャピタルや大学からの資金提供を期待できない。企業と大学がそれぞれ応分を負担して組織を立ち上げた。日本らしい取り組みだ」(福原氏)

米国ではムークが教育改革として論じられる。一方、日本では授業内容のアピールに活用したい大学側と、社員研修に活用したい企業側の思惑を折り合わせた形だ。はたして日本でも期待通りの生徒を集めることができるのか。新入生獲得に向けた春の勧誘活動が活発化する。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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