三菱UFJの1兆円増資が告げる国際新規制の“来襲”
三菱UFJフィナンシャル・グループが、巨額の資本調達で口火を切った。11月末にも内外で募集を始め、年内払い込みを見込む。発行予定額の上限1兆円の普通株公募は、日本企業で史上最大の規模だ。
今回の増資の理由を、畔柳信雄社長は18日の会見で「新しいグローバルな規制や競争環境の変化も考慮し、内外の金融仲介の機能をしっかりと果たしていくため」と説明した。実際、国際的な規制強化を見据え、グローバル金融機関の間で熾烈な資本増強レースが繰り広げられている。
金融危機で規制強化
国際基準であるBIS自己資本比率規制の現行ルールは、リスクアセット(リスクを加味した資産)に対し、最低8%以上の自己資本を要求しているだけ。だが金融危機を受けて、グローバル展開する金融機関には、資本の質・量とも、格段に高い水準を要求する新規制が導入される。
英FSA(金融庁)のターナー会長が今年3月に発表したレビューでは、中核的自己資本であるTier�の比率を8%以上、うち損失吸収力に問題のない普通株と内部留保で構成されるコアTier�で4%以上、プロシクリカリティ(景気循環増幅効果)を抑えるために、好況時には追加的な資本を2~3%積んでおく、との目標が示されていた。ちなみにターナー会長はその後、ルールを決めるFSB(金融安定化理事会)で主導的な役割を果たしている。
特に資本の「質」の議論は日本の3メガバンクグループとって相当つらい。なぜなら10年前の不良債権処理の穴埋め原資の多くを、普通株ではなく優先出資証券や優先株で調達してきたからだ。