三菱UFJの1兆円増資が告げる国際新規制の“来襲”
仮にコアTier�をTier�から優先出資証券と優先株を除いたものとすれば、9月末で三菱UFJは6・83%、三井住友フィナンシャルグループが5・9%、みずほフィナンシャルグループ4・36%。ところが欧米の大手金融機関は、すでに軒並み8~9%を達成している。
日本勢は「規制強化は景気の回復後」と、ややのんきに構えていたフシがある。が、4月以降、議論は急速に進み、9月開催のG20ピッツバーグサミットで、景気回復を前提に2012年の新規制導入が決まった。来年初めに決まる詳細について、さまざまな憶測が飛び交うが、コアTier�資本から繰延税金資産の控除が求められれば、邦銀の数値はさらに低下する。
新規制策定を主導するのは、金融危機を引き起こした張本人である米英だ。国際的なルール作りは政治的な戦略でもある。要はオリンピックと同じだ。金融危機で傷が浅かった邦銀は相対的に有利になりかけたが、ゲームのルール(規制)が変わり、むしろ形勢が不利になってしまった。
成長戦略を示せるか
邦銀にとって、度重なる増資は限界に近い。三井住友、みずほとも前回の増資後、新株発行ができないロックアップ期間中で、可能になるのは年明け。だが、みずほは今期2000億円の純益予想に対し1300億円余もの配当負担があり、当面は難しい。
そもそも増資が株主の納得を得られるのかという問題もある。欧米金融機関はフローの収益力が高いだけに、株価が回復するシナリオを投資家に提示しやすい。一方、邦銀は収益力が低い。日本の潜在成長率は0%台半ばで、預金が集まりすぎて、低利の国債で運用しているのが実態だ。