カイル:私はトレーダーですが、香港株だけに投資しているわけではなく、日本株やそのほかの海外を中心に見ています。勤めているヘッジファンドも、法人(ヘッジファンド本体)と従業員の税率が安いから、香港を拠点にしているだけ。
ケニー:IBDの仕事についても、あまり影響を受けていません。香港株式市場へのIPOは、中国企業にとってまだまだ利用価値がある。中国内の株式市場で上場しても、中国外からの資金調達や海外送金に厳格な制限があるからです。影響と言えば、新型肺炎の感染を防ぐため、香港外への出張を控えているくらいでしょうか。
エリカ:富裕層の資産運用に関しても同様です。富裕層自身が資産を引き上げて物理的に香港を去る、というよりも、運用している投資商品のポートフォリオを組み替えて、香港外の投資比率を増やすクライアントが多い、というのが正確ではないでしょうか。反対に、香港の不動産などを物理的に保有しているクライアントであれば、すぐにそれらを売却するわけにもいきませんし。
そうでないとしても、半年以上続いた民主化デモや、新型肺炎を機に香港を離れる、という選択肢を考えたことはないのだろうか。
そう尋ねると、また3人は首を横に振った。
カイル:平日はオフィスに12時間くらい滞在して、帰ったらほとんど寝るだけです。そしてオフィスの中はとても安全なので、問題ないですね(笑)。
エリカ:私の意見も同じです。新型肺炎が流行している現在は在宅勤務が認められており、在宅用のパソコンも支給してくれました。土日はデモの影響で外出が難しいこともありましたが、職を変えるほどではありません。香港にはそれを上回るメリットがあります。
香港の魅力は「税率」と「多様性」
香港の魅力とは、いったい何なのだろうか。3人が共通して挙げたのが「税率」と「多様性」の2点だ。
まず「税率」について。香港は所得税の税率が最高で17%。住民税はゼロで、相続税、消費税も存在せず、株式等の譲渡益についても課税されない。一方、日本の場合は、所得税の税率が最高で45%、住民税は10%。これだけで実に所得の55%が飛んでいく。
課税所得額が4000万円を超える高年収者であれば、単純計算で香港なら3320万円が手元に残るのに、日本ではその半額近い1800万円。さらに、日本居住者は相続税も最高55%、株式譲渡益課税は一律20%、消費税は10%と目に見えにくい税金も多い(※各種控除は除く。香港の所得税で累進課税を選択したケースで比較)。
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