自治体が「2050年CO2ゼロ」を達成する方法 国に頼らず世界にアピールする絶好の機会

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では、実際にどの程度の基準が必要か。具体的に学校と絡めて言えば、「ひとつの小学校区程度」(約2万人)の大きさで、1つの単位が作られるべきだ。それ以上、大きくなると、歩行が困難になってしまう。

次に自治体が行うべきは、自らの建物の維持管理におけるアクションプランだ。とくに、自治体で公共建造物を新築する場合は、注意が必要である。通常なら、その建物の寿命は軽く30年を超えるだろう。ということは、2050年時点で、あるいはそれ以前から、その建物は二酸化炭素を排出してはならないのだ。

したがって、これからの新築はすべて、排出量ゼロ、すなわち「カーボンニュートラル」にしなければいけない。それも、現在日本で言われている既定値の半分を目標としたゼロエネルギービルでは、不十分である。これからの新築はすべて、少なくとも自治体が建てるものは実質エネルギーゼロにする必要がある。その道筋を立てることが、次に必要なこととなる。

この道筋を、自治体がリードしなければ民間もついてこられない。実は、この「ビルのゼロエネルギー化」は大きな副次的な効果がある。執務空間の快適性が飛躍的に向上するのだ。そのこと自体が自治体の執務の効率化、改善につながるのである。

紫波町オガールに日本最高級のエコタウンができたワケ

さて、第3に求めれられるのが、住宅やその他の建築(オフィスや商業施設)の省エネルギーである。現在、国が求めているレベルよりさらに高いレベルでの規制強化が必要になる。規制という手法は、一見、時代と逆行するようだがそうではない。それどころか参加した企業の技術が上がり、新たな産業が生まれてくるようになる。

実際、筆者は岩手県紫波町におけるオガールタウンの企画に参加し、かなり厳しい温熱環境を義務化した。具体的にいうと、土地の販売にあたって、もし自治体が規定したとおりの家を建てない場合には「買い戻し特約」をつけ、(1)地元の材木を80%以上使う、(2)年間暖房負荷48kWh/㎡以下、(3)壁面後退や植栽の数を義務づけた。

(2)などは、現在、日本のトップランナーでも全館暖房をすると、この2倍くらいの負荷がある。すなわち、全国のトップランナーの半分のエネルギーしか使わない家を規制したのである。

結果は、4年間で57区画すべての土地が売れ、高性能なエコタウンが出来上がった。住まう人の満足度は高く、これに関わった工務店も、そこでの実績をもとに、高い技術をほかで応用している。いったん高性能な住宅が作れるようになると、住宅の評価は上がり、坪単価が上がる。さらに工夫を重ねることにより、技術の蓄積が生まれ、良質なストックが積み上がっていく。

日本の今までの住宅は、安く作ることばかりに主眼が置かれていた。だが、結果として「スクラップアンドビルド」が進んだだけで、ストックとしては積み上がってこなかった。もはや、人口減少時代に無駄に住宅を作ることばかりしても、あまり意味はない。次回は、具体的に排出量ゼロ、すなわちカーボンニュートラルの住宅はどうやってできるか解説していきたい。

竹内 昌義 建築家、大学教授

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たけうち まさよし / Masayoshi Takeuchi

1962年生まれ。東京工業大学大学院修了。1991年に竹内昌義アトリエを設立した後、1995年に設計事務所「みかんぐみ」を共同設立。2001年からから東北芸術工科大学(山形県山形市)の建築・環境デザイン学科准教授となる。2008年から同教授。山形エコハウス(山形県が事業主体、環境省の21世紀環境共生型モデル住宅整備事業の一つとして選定)をきっかけに、環境・エネルギーに配慮した住宅を設計、紫波町オガールタウンの監修などを手がける。『図解 エコハウス』『原発と建築家』『あたらしい家づくりの教科書』など著書多数。

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