「私の家でない」改造が裏目に認知症介護の苦悩 認知症の人ための「住宅リフォーム」を考える

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よかれと思ったバリアフリー化が、結果的に当事者や家族を不幸にしてしまう例を紹介します(写真:Fast&Slow/PIXTA)
高齢化がますます進み、近い将来、5人に1人が認知症になる時代がやってくる。家族の将来を考えてバリアフリー化などリフォームを考える人は多いが、実は間違ったリフォームはかえって症状を悪くする可能性がある。例えば、あらゆる段差をなくし、ケガをしないように「バリア」のない住居にする。一見、いいことに思えるが、自宅のバリアフリー化は元気なうちから先回りしすぎると逆効果になるという。日常的に接するバリアが身体を鍛え、健康を維持するのに役立つという側面があるからだ。またリフォームの内容やタイミングによっては、慣れ親しんだ家が自宅に思えなくなる可能性もあるという。
ノンフィクション作家の奥野修司氏は、これまで多くの認知症当事者や家族を取材することで、リアルな実情、そして問題点を見つめてきた。家族がよかれと思ってした選択が、結果的に当事者や家族を不幸にしてしまう例もある。今回は、リフォームの問題点について、最新の著書『なぜか笑顔になれる認知症介護』より抜粋して紹介する。当然のことながら個別の事情や症状によっても異なるのであくまで一例として参考にしていただきたい。

リフォームは当事者の目線で!

「認知症の母の将来を考えてリフォームしたのに、なぜか『家に帰りたい、家に帰りたい』とばかり言う。こんなことならリフォームなんてしなければよかった」「せっかくバリアフリーにしたのに、認知症の父は歩きにくそう。どうして?」

リフォームに関してこんな悩みを聞くことがある。間違ったリフォームのためにかえって症状を悪くする場合があるというが、どういった点に気をつければいいのだろうか。認知症当事者の平みきさんと、デイサービス「DAYS BLG!」を運営する前田隆行さんに伺ってみた。

一口にリフォームといっても、内容以前に時期も重要な要素である。例えば、

(1)認知症ではない時期
(2)軽度の認知症と診断された時期
(3)症状が進行し始めた時期

などが考えられるが、(3)は冒頭で紹介した「家に帰りたい」ケースで、「ある程度早い段階でリフォームするのはいいが、認知機能が落ちてからリフォームすると、症状がさらに進みます。やるべきではない」と平さんは言う。

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