家余り時代に入居希望者を増やす「ひと工夫」 住宅流通を救う!?ホームステージングの実力

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ところで、ホームステージング費用は誰が負担しているのだろう?

本来ならホームステージング費用は、物件の売り主や貸し主が負担するものだ。事例として紹介した事業者では、売り主や貸し主が負担するスタイルを取っていた。

しかし、先ほどの「ホームステージング白書2019」を見ると、不動産仲介では「不動産会社が売りに出す前に支払った」が75%、不動産賃貸では「不動産管理会社が支払った」が40%で、現状では売り主や貸し主に費用を請求するハードルが高く、本業を取り扱うためのサービスとして不動産会社などが負担している様子がうかがえた。

費用はいくら程度か

ホームステージング費用はいくら程度になるだろう? ステージングする部屋数や広さ、どこまで作りこむかなどで費用は異なるが、「ホームステージング白書2019」によると、物件価格3000万円台で平均23.7万円、家賃10万円~15万円の場合は平均10万円になっている。

■不動産仲介

図表① (出所)日本ホームステージング協会「ホームステージング白書2019」

■不動産賃貸

図表② (出所)日本ホームステージング協会「ホームステージング白書2019」

さて、今回事例として紹介したのは、ホームステージングコンテストの受賞作だ。筆者はコンテストの表彰式にも行ったが、受賞者の顔ぶれを見て、ホームステージングが多様な業界に普及していることに驚いた。

不動産業界でも、不動産仲介、買取再販、不動産賃貸管理、新築分譲と広範囲であることに加え、家具メーカーなども参入していた。例えば、家具メーカーのニトリもコンテスト受賞者だが、ホームステージングを見た契約者が設置した家具などの購入を希望すれば、ニトリが同じものを販売できるため、双方にメリットが生じることも背景にあるだろう。

近年では、大手不動産仲介会社が、自社にのみ売買の仲介を依頼することや一定の査定額であることなどを条件にホームステージングを行うといったサービスが見られるようになった。

とはいえ、家余りの時代に家を売ったり貸したりするのだから、不動産会社任せではなく、売り主も貸し主自らが、所有する物件をどのように魅力的に見せるかを考える転換期にあると思う。

山本 久美子 住宅ジャーナリスト

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やまもと くみこ / Kumiko Yamamoto

早稲田大学卒業。リクルートにて、「週刊住宅情報」「都心に住む」などの副編集長を歴任。現在は、住宅メディアへの執筆やセミナーなどの講演にて活躍中。「SUUMOジャーナル」「All About(最新住宅キーワードガイド)」などのサイトで連載記事を執筆。宅地建物取引士、マンション管理士、ファイナンシャルプランナーの資格を有す。

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