楽天、携帯事業開始「半年遅れ」が手痛い事情 参入前に大手3社が囲い込みを推進

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「他社3Gご利用の方は、お乗り換えでiPhoneが一括0円」

都内のauショップに張り出された「iPhone 0円」の案内(記者撮影)

キャリア3社の各ショップでは今、入り口などの目立つところにそんな案内を貼り出している。3Gの端末の大半はガラケーだ。つまり、「ガラケーからスマホに乗り換えてウチと通信契約を結ぶ場合は、高額なスマホでも実質0円まで値引きますよ」と宣伝しているのだ。

改正法の「通信契約を条件にした端末値引きの上限は2万円」という規制は、3Gの端末から4Gの端末へ移る場合は例外となっており、販売価格が0円を下回らない限りはいくらでも値引きできる。政府もスマホへの移行を奨励したいからだ。

数千万契約の大争奪戦

今年4月の5Gの商用化も控える中でキャリア各社は昨年までに、3Gを2020年代半ばまでに終了することを相次いで発表した。ガラケー利用者はそれまでに、4G対応のスマホに切り替えていく必要がある。

3Gの契約数は、2019年9月末時点で約3657万に上る(総務省)。このうちの多くがガラケーの通信契約とみられる。ガラケーからスマホへの切り替えは、そうした通信契約の見直しの機会になる。キャリアにとっては、自社のガラケー利用者が他社へ流出しかねない危機でもあるが、他社のガラケー利用者を自社に取りこむ絶好の好機でもある。

そのため、各キャリアのショップは今年度から必死になって、ガラケー利用者をターゲットにした販促に力を入れているのだ。

楽天モバイルもガラケー利用者がスマホに移る際に、新たな通信契約先の有力な選択肢のひとつになりうる。だが、事業の開始時期が半年間ずれ込んだことで、目下勃発している「ガラケー利用者の大争奪戦」に乗り遅れている。

楽天モバイルは、まだどんな通信プランを出すかを明らかにしていないが、三木谷氏は昨年9月の会見で「他社にマネできないような料金体系になる」と強気の姿勢を見せていた。

事業開始の遅れで顧客獲得の難易度は上がっているが、それをものともしないほどに圧倒的に安く、魅力的なプランを出せるのか。詳細は2月下旬から3月上旬ごろに発表される見通しだ。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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