2000年以降に増えた希望退職者の募集。これまで、景気の低迷とリンクして増加傾向をみせてきました。業績不振で特定事業から撤退、そのぶん余剰人員が出るため希望退職を募る……というケースが一般的でした。
東京商工リサーチがまとめた、希望退職者を募集した企業数のグラフを見ると、2002年と2009年に大きなピークができています。2002年は計200社が希望退職を実施し、総募集人数は3万9732人。2009年の実施企業数は191社で、総募集人数は2万2950人。
これらのピークには、明らかな環境要因がありました。2002年はITバブルが崩壊、小泉政権下で進められた銀行の不良債権処理の影響。2009年は前年に起きたリーマンショックの影響で業績が大幅に落ち込んだ企業が急増しました。人員削減がまさに景気低迷にリンクしていたのです。
ところが、現在は景気低迷までに至らない状況ながら、希望退職が急増しつつあります。過去にあった大きな2つのピークまでには至っていませんが、2019年1~11月の上場企業の早期・希望退職者の募集(または応募)が、1万人を突破。年間で1万人を超えたのは6年ぶりで、2018年1~12月(12社、4126人)の約3倍の人数に上るとのこと。その増加の一因が、味の素のような「戦略的な」希望退職のようです。
味の素のように短期的な業績からみれば、希望退職が急ぎで必要とは思えない会社が何社も並びます。さらに2020年以降も希望退職を募る方針を明らかにしている企業が何社もある様子。この動きが大きなうねりになっていく予感がします。
再就職支援に手厚い企業が増えている
このように、今回の希望退職の増加は、過去のピーク時とは明らかに違う動きとも言えますが、実際に希望退職に手を挙げた場合、その後のプロセスに変化はあるのでしょうか?
これまでは、退職金の積み増しなど「このタイミングに辞める特典」を得て、次の職探しへ向けて、セカンドキャリアの支援プログラムに参加するケースが多く見られました。今回の場合、退職金の積み増し額に大きな変化はないようですが、後者のセカンドキャリア支援に対する時間と手間をかける会社が増えている傾向がみられます。
具体的には、再就職支援会社を活用して能力開発やカウンセリングをするだけではなく、転職支援によって次の職がみつかる人が増えたようです。ある大手の再就職支援会社では、転職活動を始めて半年以内で7割以上の人が再就職しているとのこと。
再就職を実現するための企業努力も進んでいるようです。例えば、自社独自で求人開拓部隊をつくり、求人情報が公開されていない企業に対して、シニア人材の受け入れを直接提案。新たな再就職機会の創出に力を入れるようになってきました。
さらに全国で公開されている求人をまとめて探せるシステムを開発。シニア人材を受け入れる求人を見逃さないようにするという活動の徹底ぶり。こうした企業努力を各社が行い、再就職の実現率向上、満足度の高い再就職が増加しているようです。
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