また、配当はそこそこに安定しているので、配当金を年金に加える生活費の足しにすると、わかりやすいし、気分がいいと思うかもしれないが、「その考えはやめておくほうがいい」と強く申し上げたい。
投資の収益は、あくまでもインカムゲインとキャピタルゲイン(ロス)の最終的な手取りのトータルで考えるべきであり、両者を区別して考えようとすることは判断を誤る元だ。せっかく多分配型投信のばかばかしさに気づいたのであればなおのこと、インカムゲインに対する特別視を卒業すべきだろう。
投資の初心者が「卒業」すべき傾向として、「ドルコスト脳」(平均買い単価にこだわる考え方)、「インカム脳」(インカムゲインをキャピタルゲインと分けて考えようとする傾向)の2つを挙げておきたい。
先入観を捨てるのは大変かもしれないし、金融マンやFP(ファイナンシャルプランナー)などでこうした考え方を勧める困った人が少なくない。だが、東洋経済オンラインの読者には、生きているうちに脳ミソを使って、正しい考え方にたどり着いてほしい。
問題は「分散投資」だ
例えば、先ほど挙げた5つの銘柄におおよそ等金額で投資するとすれば、どうか。これらの会社は、いずれも「現時点で強い事業を持っている会社」だが、所詮会社の盛衰は不確実なものだし、何よりも株式市場の評価は気まぐれだ。
入門的な株式運用として、5銘柄くらいから始めてみようといったアプローチには反対しないが、老後の生活の備えなどのために本格的に資産運用をしようとする場合、5銘柄では分散投資が不足だと筆者は考える。1銘柄で2割は投資ウェイトが大きすぎる。
業種などの分散も考えたうえで、十数銘柄規模以上で分散投資したポートフォリオで運用できるのでなければ、個人投資家が資産形成のために高配当銘柄で運用するという方針には賛成できない。しかし、十数銘柄単位のポートフォリオのバランスを取って、リスクを把握するには個人投資家の場合、分析ツールが不足しているし、かなりの投資知識(単なる「経験」でなく「知識」!)が必要だ。
投資を行いつつ、しかし、資産から定期的な現金収入が欲しいという方には、手数料の低いインデックス・ファンドに投資しつつ、ネット証券などが最近導入している「定期売却サービス」(例えば、毎月一定額を自動売却できる)を利用することをお勧めする。
読者ご自身で調べてみていただきたい。「定期売却サービス」は、うまく活用すると毎月分配型ファンド的な悪徳商品を使わずに定期的な現金を資産から得られるよい仕組みなので、心あるFPや金融マンは顧客に使い方をアドバイスするといいだろう(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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