積極的な資金運用を行い、ハイリスク・ハイリターンの金融商品のウエートが高まれば当然、巨額損失を被る可能性も高まる。表「主な大学の資産運用損失」で運用損失を計上した大学を見ると、「運用利回りランキング」の上位に来ている大学が多いのも、そのことを証明している。
(注)「大学四季報」掲載の大学で、週刊東洋経済実施のアンケートで判明した運用損失(デリバティブ運用損+有価証券処分損+有価証券評価損)が10億円以上の大学を記載。「-」は「0」もしくは未記入
前述したように、収入源の多様化は、今後の大学運営にとって必要不可欠であり、資産運用はそのための有効な手段であることは確か。全否定するのは間違いだが、長期的な事業計画に支障を来すことがないよう、運用マネジメント体制をさらに強固なものにしていく必要がある。
日本私立学校振興・共済事業団が今年1月に実施し、3月に公表した「資産運用に関するアンケート調査」によると、元本保証のない仕組み債を保有する大学は全体の23・6%、デリバティブ取引を行っている大学は14・7%となっている。
「金融危機の前までは、証券会社の営業マンが盛んに訪問してきたし、運用セミナーも頻繁に開催されていた」(前述とは別の中堅大学幹部)。金融商品がますます複雑化する中、大学も「証券会社に勧められたから」では済まされない。
文部科学省は今年1月6日、「学校法人における資産運用について」という参事官通知を出し、元本保証のない金融商品での運用は慎重に取り扱うこと、規定の整備や責任ある意思決定、適正な執行管理に務めるよう私立大学に求めた。同時に、事業報告書や財務諸表の情報公開を通じて、外部に対する透明性をさらに高めていくことも重要だろう。
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