私立大・財務力ランキング【09年版】--経常収支、資産運用から分析、経常収支は津田塾、運用利回りは関西外語がトップ

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 すると、その大学数は62と、半数強にまで減ってしまう。そもそも「大学四季報」掲載の私立大学は、一定数の学生数を持つ中堅クラス以上。それでも4期連続の経常収支黒字を達成するのは、そう簡単なことではないのだ。

その62大学について、08年度の経常収支比率でランキングしたのが表1A,B(5,6ページに掲載)だ。経常収支比率は帰属収入に対する経常収支の割合で、いわば大学の売上高利益率に当たる。併せて、05年度から08年度までの4期平均も掲載した。

 第1位の津田塾大学は、本当に強い大学ランキング【2009年版】の解説記事でも触れたとおり、同窓会組織である財団法人津田塾会が解散し、千駄ヶ谷の土地などを大学に寄付したことによる影響が大きい。従来の財政規模に比べて寄付金額が巨額だったため、経常収支および経常収支比率が急膨張する結果となった。同時に、経常収支比率の4期平均も引き上げられた。ただ、08年度を除く3期平均も15・2%となっており、これ自体、他のランクイン大学と比較して遜色はない。

 第2位の関西外国語大学は4期すべて経常収支比率が40%以上。自己資本比率も93・7%と高く、財政状況は良好だ。第3位の明海大学も過去4期において、高い経常収支比率を達成している。そのほかの上位大学も08年度、4期平均ともに高水準のところが多く、安定的な収益力を示す結果となった。

もちろん、冒頭でも述べたように大学の使命は質の高い教育研究を行うこと。利益を上げるのが目的ではない。特に、私立大学は一般的に、収入に占める入学金や授業料など学生納付金のウエートが高い。つまり、収入の源泉は学生なのだ。

内部資金を教育投資に振り向け、その学生に対して“利益還元”していくことが、大学経営の基本。それが、教育の質をさらに高め、学生募集にプラスになるという好循環が生まれれば大学にとっては理想的だ。そのためにこそ、経常収支の安定確保は重要課題の一つとなる。

積極的にリスクをとり資産運用をする大学も

とはいえ大学は、18歳人口の減少による「市場規模の縮小」という構造的問題を抱えている。超ブランド大学ならともかく、特に地方の中小規模大学では学生集めに汲々(きゅうきゅう)としているところが少なくない。そうした状況では授業料値上げもままならず、学生納付金だけに頼っていては将来先細りになる。そのため、各大学では寄付金や補助金、あるいは事業収入など収入源の多様化に力を入れている。

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