金融危機の影響による一部大学の巨額損失が明らかになったことで、にわかに社会的関心が高まった大学の資産運用も、そうした収入源多様化の試みの一つだった。
ある中堅大学の財務担当者は語る。「資産運用で評価損を出したというだけで批判されてはたまらない。それでは手をこまぬいて何もしなければよいというのか」。
実際、財政状況が良好で、運用に資金を回せる大学にとって資産運用収入は貴重な収入源になりつつある。7、8ページに掲載している表2A、Bの「運用利回りランキング」は、大学の「運用可能資産」に対する資産運用収入の比率の高い順にランキングしたものだ。
ここでいう運用可能資産は「理論的にはこれだけの資金を運用に回せる」という想定額であり、実際に大学が運用に回している資金額とは異なる。だが、大学の資金規模の一つの目安であり、それと運用収入を比較することで、各大学の「資金運用力」を見て取ることができる。
第1位の関西外国語大学は経常収支比率ランキングで第2位につけたことでもわかる良好な財務状況の下で、08年度は7・4億円の資産運用収入を稼いだ。運用利回りは約15%という高水準だ。
第2位の駒澤大学は13・9億円の資産運用を稼ぎ、運用利回りも9%と高かった。だが、その一方で、左表にあるようにデリバティブ運用損で154億円もの巨額損失を計上し、理事長が解任される事態にまで発展。大学の資金運用に社会的関心が集まる一つのきっかけを作った。
第3位の愛知大学も同様にデリバティブ損失を計上。キャンパス移転計画の一部見直しを行った。慶應義塾大学でも169億円という巨額の有価証券評価損が発生。新小中一貫校の開設延期など150周年事業の見直しを余儀なくされた。