「ミイラ43体」に隠されたそれぞれの人間ドラマ 大盛況「ミイラ展」はこう見ると面白い

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話題の「ミイラ展」。そこにあるドラマとは?(写真は「グレコ・ローマン時代の子どものミイラ」)
ミイラ43体を集めた特別展『ミイラ ~ 「永遠の命」を求めて』が、上野の国立科学博物館で2月24日(月・休)まで開催されている。
ミイラというとエジプトのイメージが強いが、実はヨーロッパ、南米、オセアニア、日本にも存在する。そして1体1体のミイラには、想像もつかないドラマが隠されている。日本人類学会きってのミイラ好き、国立科学博物館の人類史研究グループ研究主幹の坂上和弘さんに、その魅力を聞いた。

ミイラは情報の宝庫

ミイラとは、生前に近い姿を長く残している遺体のことだ。人為的に作られたものもあれば、たまたま自然になったものもある。この展覧会では、エジプトはもちろん、南米インカ帝国時代のもの、高校の理科室から発見されたものなど、地域も時代もさまざまな43体を見ることができる。

「ミイラは情報の宝庫なんですよ」と坂上和弘さんは語る。遺体を土葬や火葬にすると、普通は骨しか残らない。その骨もいつかは消えていく。しかし、ミイラには皮膚、内臓、髪の毛などが残っている。どんな遺伝子を引き継ぎ、何を食べ、どんなふうに亡くなり、どう処理されたのか、現代の科学技術を使って多くの情報を引き出すことができるのだ。

例えば、医療用のCTにミイラを通して断面を撮影すると、病気や骨折の跡、死因などがわかる。最近では、原始的な生活をしていたはずの数千年前のミイラが、かなりの確率で動脈硬化になっていたという研究発表があった。

こうした生物学的なことに加えて、「人が作ったミイラは、作った人の考え、センス、作り方など、いろいろなものが集約された文化のかたまりです。過去の文化を知るための情報源でもあるんです」。ミイラから人間の歴史が見えてくる。

では、坂上さんとミイラを見ていこう。

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