「ミイラ43体」に隠されたそれぞれの人間ドラマ 大盛況「ミイラ展」はこう見ると面白い

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《弘智法印 宥貞》 福島県、1683年頃

小貫即身仏保存会 写真提供:浅川印刷所

海外の研究者からも注目されているのが日本の即身仏だ。人々を苦しみから救うため、僧侶が自ら「仏」となった。生きているときに「穀断(こくだ)ち」をして、土中に作られた石室に入り、亡くなるまで瞑想を続ける。3年以上たってから信者が掘り出し、漆を塗るなどして姿を整え、法衣を着せる。《弘智法印 宥貞(ゆうてい)》は1683年頃、92歳で入定した真言宗の高僧だ。普段は福島県石川郡浅川町の貫秀寺に安置されている。

坂上さんは日本で16~17体の即身仏を確認している。先ほども触れたように、日本では湿度管理、虫よけ対策ができないとあっという間に骨になってしまう。坂上さんはCTをとって情報を残し、保存する活動に取り組んでいる。

日本では江戸後期に、学問的な探究心から自らミイラになった本草学者がいた。「後世に掘り出して確かめるように」と遺言された子孫が第二次世界大戦後に墓を開けると、本当にミイラになっていた。亡くなる直前に大量の柿の種を摂取し、そこから出たタンニンが防腐に役立ったと考えられている。

以上のほかにも多様なミイラがあり、彩色された棺、猫や鳥のミイラ、副葬品、エジプトのミイラの作り方なども見ることができる。

「どのミイラもすごく個性的なんですよ。それぞれに生きてきた歴史があり、ミイラになる過程があり、発見されてからのドラマがある。その不思議さと、もろくてはかないところも魅力です。これまで大切に守られてきたものなので、今後にバトンをつないでいきたい。情報の宝庫であり、まだまだ多くの可能性を秘めていることを理解してもらえればうれしいです」

(展覧会データ)
特別展『ミイラ ~「永遠の命」を求めて』
国立科学博物館(東京・上野公園)
2019年11月2日~2020年2月24日
午前9時~午後5時(金・土曜は午後8時まで)
月曜(祝日の場合は火曜)休館(2月17日は開館)
一般・大学生1700円、小・中・高校生600円、ほか
TEL 03-5777-8600(ハローダイヤル)
仲宇佐 ゆり フリーライター

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なかうさ ゆり / Yuri Nakausa

週刊誌のカルチャーページの編集・執筆を経て、美術展、ラジオ、本などについて取材、執筆。全国の美術館と温泉をめぐり歩いている。

 

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