「ミイラ43体」に隠されたそれぞれの人間ドラマ 大盛況「ミイラ展」はこう見ると面白い

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《下腿部を交差させた女性のミイラ》 ペルー、1390年頃~1460年頃
ライス・エンゲルホルン博物館 REIS-ENGELHORN-MUSEEN, MANNHEIM

《下腿部を交差させた女性のミイラ》は20~40歳の女性と推定されている。ドイツ人が外国から持ち帰り、博物館に収蔵された。

「ミイラは誰もがドキッとする魅力的な存在なので、発掘場所や年代の情報がないまま売られたり、贈られたり、コレクターに収集されたりすることがあるんです」

19世紀にヨーロッパのお金持ちが海外旅行のみやげとして持ち帰り、倉庫にしまったままになっていたという例も少なくない。とくに英国ではエジプトブームが起こり、何体ものミイラが持ち帰られた。

「エジプトのミイラは1798年にナポレオンが遠征したときから研究対象となっていたので、研究が進んでいます。エジプトと並んで世界二大ミイラ文化があるのが南米です。ただ、南米には長いこと研究機関がなく、研究者もほとんどいませんでした」

そのためエジプトが持ち出しを規制してからも、南米では手に入れやすかったという。

ミイラになったこの女性には名前があり、家族がいて社会の一員だったはずだが、長い間、地域も時代もわからないままだった。それが副葬品の織物から南米ペルーのチャンカイ文化に属するものと推定され、科学的な年代測定でも1390年頃~1460年頃と時代が一致した。

「情報が失われたままのミイラは世界中にたくさんあります。この女性のように、情報を取り戻して価値を復活させることもミイラ研究の最先端の一つです」

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