16時に仕事が終わるフィンランド人の満足生活 なぜゆとりある働き方ができるのか?

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春が来て、朝日が早くのぼるようになると、早めに仕事に来て、15時ごろには家に帰るという人も増える。通勤時間が長くかかる人や子どもを送ってから来るという人の中には、遅めに来る人もいる。ただ、どちらかというと早く来て、早く終わらせて、家族や趣味に時間を費やしたいという人が多いように感じる。就業時間やコアタイムと言われる必ずいなければならない時間をきちんと守っていれば、文句を言う人はいない。

この徹底ぶりは、企業レベルの努力というより、国や社会全体の常識といったほうがいいだろう。非常にシンプルに、決まりは決まり、休むことも社会人の権利で、人間誰しも必要という認識がきっちり共有されている。

法律で決められている1日8時間、週40時間以内の勤務時間は守られるべきで、よっぽどの理由がない限り、残業はしてはならないし、雇用主もさせてはいけない。それは、官公庁でも、大企業でも、中小企業でも同じで、経済雇用省のデータによると、多くの業界では平均的な勤務時間は40時間よりも短く、週37.5時間だそうだ。

それは、医師も例外ではない。地域のヘルスセンターで働くある外科医からは、こんなエピソードを聞いたことがある。前の手術がおして、自分が執刀する予定だった手術の時間が後ろにずれこんでしまい、このままでは定時で帰ることが無理になってしまった。

すると「執刀医をあなたから、次のシフトの医師に変えるから、普通に帰っていいよ」と言われたそうだ。手術の内容によってはそうできないこともあるのだろうが、極力、決まった勤務時間を守ろうという文化が垣間見られる。

さらに3歳未満の子どもがいたり、子どもが小学校に上がるときなど、法律で決められているよりも柔軟に時短勤務を認めている企業も多い。だからといって、仕事の量が大きく減るわけではないのでかなり負担はあるが、それによって、家庭や仕事の両立がしやすくもなっている。

残業しないのが、できる人の証拠

だが、何かの事情でどうしても残業が必要な場合がある。そのときは、事前に上司の許可を取ったり、上司がそれを望む場合は、本人の意思を事前に確認したりする必要がある。残業はお金もしくは休暇で補償されるが、どちらも企業にとってみれば損失になる。会社の損失を少なくするうえでも、休日出勤や残業は極力避ける方向にある。

そして、仕事を終えて、また次に仕事に行くまでに11時間のインターバル(仕事をしない時間)を設けることや、週に1度は35時間の休憩をとることも法律で決められている。

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