16時に仕事が終わるフィンランド人の満足生活 なぜゆとりある働き方ができるのか?

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だが、一部の人がまだ仕事をしているのに15時や16時に会社を出るのは後ろめたくはないだろうか。フィンランド人は「人は人、自分は自分。既定の時間数を働いたら帰るのは当然」と考えていて、誰かの顔色をうかがう様子は見られない。どちらかといえば「私もそんなふうに定時で帰りたい」と思っている人も多い。

フィンランドの友人が「大変な仕事を簡単そうにやっていたり、効率よくこなしサーっと帰るのが格好よく、できる大人の証拠」と言っていたが、まさにそういう効率のいい人が求められている。

在宅勤務は3割

フィンランドでは、週に1度以上、在宅勤務をしている人は3割になる。職場が遠いために自宅で仕事をしている人もいれば、職場が近くともまだ小さな子どもの送り迎えの時間を考えて、週に1、2度自宅で働いている場合もある。

私の友人の1人は、結婚を機に数百キロ離れた地域に引っ越すことになったが、会社も本人も仕事の継続を望んだため、在宅に切り替えた。今は、パソコンと電話があれば、ほとんどの仕事は問題なくできる。社内の会議にもインターネット電話で参加している。

もう1人の友人は、週に1度だけ自宅で仕事をしている。彼は、頻繁にレポートなど文章を書く必要があるため、家の静かな環境で集中してやりたくて上司に提案した。さらに、まだ小さい子どもが小学校からまっすぐ帰ってきたときに、家で迎えたいと願ったことも在宅を選んだ理由の1つである。

オフィスで働くことは、同僚に気軽に相談したり、コミュニケーションを取って刺激を得たりする意味ではとても重要だが、週に1度は1人になれる今のペースがとてもいいのだそうだ。

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在宅勤務というと、勤務時間の管理ができないので難しいという声を日本で聞いたことがあるが、フィンランドでは逆にそれを管理するツールを聞いたことがない。やらなければいけない仕事は山ほどあるし、自宅にいたらサボるとは、あまり考えていないようである。

今のような就労時間や場所に柔軟性が生まれたのは、1996年に施行された就労時間に関する法律の影響が大きい。この法律は2020年1月に改正され、働く時間や場所が今まで以上に自由になる。就労時間の半分は、働く時間も場所も、従業員と雇用主が相談して自由に決定することができるようになるのだ。

それによって、皆が一斉に会社に来て、一斉に帰るというよりも、一人ひとりが自分のライフスタイルにあった働き方を見つけ、多様な働き方が可能になる。「仕事=会社で行う」という図式は崩れ、その人のライフスタイルにあった形で、最も生産性が高くなる場所と時間に行うというように変わっていっている。

さらに、人材を確保する意味でも、こういった柔軟な働き方の制度は求められている。場所を問わず遠隔の作業も可能になれば、地方にある会社でも優秀な人材を全国から集めてくることもできるし、柔軟な働き方を認める企業は社内外の評判も高まる。

堀内 都喜子 ライター、翻訳家

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ほりうち ときこ / Tokiko Horiuchi

1974年長野県生まれ。大学卒業後、日本語教師等を経て、フィンランド・ユヴァスキュラ大学大学院に留学。異文化コミュニケーションを学び、修士号を取得。フィンランド系企業に勤務しつつ、フリーライターとしても活動中。

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