Facebookの通貨「リブラ」に世界が震撼した理由 価格変動しにくい仮想通貨は何を目指すのか

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知識を持たない状態で純粋に考えてみたとしても、その可能性についてはおぼろげながらも想像がつく。なのに世界の金融当局やアメリカ政府・議会などは、リブラの発行計画をなぜ警戒するのだろうか? 著者の木内氏によれば、その理由は2つあるようだ。

第1は、リブラに小口の支払い手段としてグローバルに利用される潜在力があることを、彼らが見抜いているから。

フェイスブックの関連アプリは、SNSのフェイスブック、写真投稿アプリのインスタグラム、メッセージアプリのワッツアップ(WhatsApp)、メッセンジャーと多彩。それらの利用者総数は、現在約27億人に達しているとされる。

これは2018年の世界の総人口の37%程度、すなわち3人に1人に相当する。ポイントはここだ。フェイスブック関連アプリの利用者が、そのアプリ上で一斉にリブラを利用し始めれば、支払い手段として世界で一気に広がる可能性があるということ。当然それは、現在流通している仮想通貨とは比較にもならないほど大規模なものだ。

だからこそ、この新たなデジタル通貨が、金融システムを不安定化させ、金融政策の有効性を低下させ、マネーロンダリング(資金洗浄)など犯罪に利用されるリスクを高めるかもしれないという懸念が広がったわけである。

そして第2は、この構想を設計し、少なくとも当面の運営を主導するのがフェイスブックだったという点だ。なにしろ同社には、大規模な個人データ流出問題を引き起こした過去がある。

今までの仮想通貨との違い

それはさておきリブラは、現存する多くの仮想通貨とどこが違うのだろうか?

ビットコインに代表される従来の仮想通貨が、投資・投機対象として関心を集め続けているのはご存じのとおりだ。しかしその一方、支払い手段としての利用はかなり限られてもいる。その主たる原因は、仮想通貨のボラティリティー(価格変動率)が非常に高いことだ。

IMF(国際通貨基金)によれば、ビットコインのボラティリティーは、ほとんどのG7(主要7カ国)通貨間の価格変動率の10倍程度にも達している。また、通貨危機に見舞われているベネズエラにおける通貨の対ドルレートの変動率よりも高いという。

価格のボラティリティーが高ければ、値上がり益で儲けることもできるので投資対象としての魅力は高まる。だが、支払い手段としてはどうだろう? 非常に使い勝手が悪いため、利用が広がりにくいという側面があることを無視できないのだ。

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