Facebookの通貨「リブラ」に世界が震撼した理由 価格変動しにくい仮想通貨は何を目指すのか

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つまりリブラ計画は、こうした理念の延長線上にあるとも考えられるということ。事実、リブラ計画の概要を示すホワイトペーパーでは以下の6つの理念が打ち出されているが、それらは社会的価値を築く(BUILD SOCIAL VALUE)と多くの部分で重なる。

・もっと多くの人が金融サービスや安価な資本を利用できるようにする必要がある、と私たちは考えます。
・人は合法的な労働の成果を自分でコントロールする生まれながらの権利がある、と私たちは考えます。
・グローバルに、オープンに、瞬時に、かつ低コストで資金を移動できるようになれば、世界中で多大な経済機会が生まれ、商取引が増える、と私たちは考えます。
・人びとは次第に分散型ガバナンスを信頼するようになる、と私たちは考えます。
・グローバル通貨と金融インフラは公共財としてデザインされ統治されるべきである、と私たちは考えます。
・私たちには全体として、金融包摂を推進し、倫理的な行為者を支援し、エコシステムを絶え間なく擁護する責任がある、と私たちは考えます。(33〜34ページより)

ここからは、社会的意義を強調することによって、フェイスブックのイメージアップを測ろうとする狙いを読み取ることもできよう。だが、本当の狙いはそこだけにとどまらない可能性もあると著者は主張している。

規制強化の渦中で既存のビジネスモデルが修正を迫られる中、フェイスブックがビジネスモデルの転換、そして新たな収益源の確保を狙ったという側面もあると予測できるというのだ。

はたして、真の思惑はどこにあるのだろうか?

必要最低限の知識はつけておくべき

リブラについて賛否両論があることには冒頭で触れたが、参考までに書き添えておくと、私はどちらかといえば「否」の側にいた。

『決定版 リブラ: 世界を震撼させるデジタル通貨革命』(東洋経済新報社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

といっても、リブラのことをきちんと理解していたわけではない。それどころか、そもそも過去に仮想通貨の類いが盛り上がった時点で懐疑的だったのだ。

そして、仮想通貨とリブラの差異もよくわかっていなかったように思う。つまり、従来の仮想通貨の延長線上でリブラを見ていたということ。だから偉そうに語る資格は微塵もないのだが、だからこそこうした入門書が出たことをまずは歓迎したいと思っている。

結果として肯定するか否定するかはともかく、必要最低限の知識はつけておきたいからだ。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー・ジャパン」「ニューズウィーク日本版」「サライ.jp」「文春オンライン」などで連載を持つほか、「Pen」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(PHP文庫)、『いま自分に必要なビジネススキルが1テーマ3冊で身につく本』(日本実業出版社)『「書くのが苦手」な人のための文章術』(PHP研究所)、『先延ばしをなくす朝の習慣』(秀和システム)など著作多数。最新刊は『抗う練習』(フォレスト出版)。

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