Facebookの通貨「リブラ」に世界が震撼した理由 価格変動しにくい仮想通貨は何を目指すのか

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リブラについてフェイスブックは、金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)に貢献するという社会的意義を強調しているそうだ。金融包摂とは、金融サービスを受けられない人に対し、新たに金融サービスにアクセスできるような環境を整えることである。

フェイスブックは、世界中で17億人の銀行口座を持たない人(アンバンクト:unbanked)に対して、リブラは支払い手段を新たに提供できる、とその意義を主張している。また、貧しい人の支払いコストを軽減することにも役立つとしている。
現在の決済システムは、多くの人、とりわけ貧困層にとってかなりコストが高い、という問題点があることは否定できない。世界銀行によると、新興国の出稼ぎ労働者は、本国への送金に平均で6.9%の手数料を支払っているという。(30〜31ページより)

しかし先にも触れたとおり、フェイスブックのリブラ発行計画に対しては世界中の金融当局やアメリカ議会から、強い警戒の声が噴出している。

また、アメリカの反トラスト法(独占禁止法)の適用を視野に入れた司法当局の捜査の手も着実に伸びつつある。米議会においては、フェイスブックを含む大手プラットフォーマーであるGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の解体を主張する意見も出ているというのだ。

つまり、逆風の渦中にあることは間違いない。それを理解したうえで、フェイスブックはあえてグローバル規模でのデジタル通貨の発行、そして新たな金融分野への参入を実行しようとしているのである。

だとすれば、多くの批判を浴びるであろうことは必至だ。にもかかわらず、フェイスブックはなぜこのタイミングでリブラの発行計画を公表したのだろうか?

迫られるビジネスモデルの修正

フェイスブックが2012年に発表した5つの経営理念は、①影響力を重視(FOCUS ON IMPACT)、②迅速に行動(MOVE FAST)、③大胆であれ(BE BOLD)、④オープンであれ(BE OPEN)、⑤社会的価値を築く(BUILD SOCIAL VALUE)の5つ。

最後の社会的価値については、「フェイスブックは単に一企業を築くために存在しているのではなく、より開かれ、つながった世界を作るために存在している。フェイスブックで働くもの全てには、日々のあらゆる活動において、世界にとって真に価値あるものをどのようにして築くか、という点に力を注いでもらいたい」と説明されていた。(33ページより)
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