新型スカイラインが背負う日産ブランドの復権 やる気を感じた大がかりなマイナーチェンジ

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もっと走りの歓びの優先度が高い人のためには、新たにV型6気筒3.0Lツインターボユニット搭載車が設定されている。レギュラーモデルとなるGT系のユニットは最高出力304ps。低速域から力感にあふれ、かつ高回転域に向けたパワーの高まりも味わえる、なかなか好印象のエンジンである。もっとも、こちらはパーキングブレーキが今どき足踏み式になるし、プロパイロット2.0も選べないのが悩ましいが……。

新型スカイラインの後ろ姿(写真:日産自動車)

それだけじゃない。さらにその上には最高出力405psの「400R」も用意されている。実に101psを上乗せしているこのエンジンだが、レスポンスを重視してターボチャージャーは大容量化せず、304ps仕様と同じものを使っているという。ターボ回転センサーによって過回転を防ぎつつ、ターボチャージャーの地力の限界まで使い切ることで、高レスポンス、高出力化を実現しているというのだ。

400Rの購入層は比較的若い

実際、アクセル操作に対する反応は非常に鋭く、2000rpm辺りからでも右足の動きに追随してモリモリとトルクが湧いてくる。しかも高回転域に至るまでスムーズに伸びていって、まさに胸のすく加速を可能にしているのだ。内燃エンジンに乗る歓び、濃厚である。

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とくにパドル操作した時の、組み合わされる7速ATのレスポンスが今ひとつなのが惜しいが、期待には十分応えてくれる。専用のセッティングとされたダイレクト・アダプティブ・ステアリングや可変ダンピング機構付きのサスペンション、対向ピストンキャリパーへと強化されたブレーキの感触も上々で、これぞスポーツセダンという雰囲気は満点だ。

この400R、立ち上がりの販売状況は何とスカイライン全体の4分の1を占めるほど好調だという。しかも年齢層、比較的若いのだそうだ。結局、皆が待っていたスカイラインとは、こういうものだったのだろう。実際、試乗中は自分でも「輸入車何するものぞ。日本にはスカイラインがあるんだぞ」なんて、当事者でもないのにどこか誇らしいような、そんな気持ちになったのだった。

間違いなくスカイラインというブランドの復権につながるだろう、この新型。今、日産自動車という企業のイメージは大きく揺らいでいるが、案外こういう古株的なクルマこそがブランドへの信頼を下支えすることになるのではないだろうか。それによってブランドを大事にする気持ちを、新しい経営陣が少しでも持ってくれればと願うばかりである。

島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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