もともとの大まかなデザインを手がけるのは「コンセプトアーティスト」、いわゆるアートディレクターですが、彼らは「こんな形にしたい」というデザイン案を1枚の絵にして示します。ただ、2次元の絵ですから、立体的に考えたとき、部品の厚みや曲面の形といった細部は描かれていないことが多い。その2次元の絵を見て、そうした細かいところのデザインを自分で考えてはめ込んでいくのが、モデラーの仕事です。
ただ、モデラーがやる作業は色をつける前まで。だから僕たちが作るものはグレーの状態です。グレーの形を作るのがわれわれの仕事で、その後に色を塗ったり、汚しを入れたりするのは、「テクスチャアーティスト」という専門の方がいます。いってみればモデラーというのは、CGの工程の中でも最初の工程の仕事になるのです。
分業体制が確立
――効率よく作業を進めるための分業体制が確立しているということでしょうか。1つの作品でモデラーに携わっているのは何人くらいいるのでしょうか。
ILMのスタジオは、サンフランシスコとロンドン、バンクーバー、シンガポールにあり、各スタジオに作業を割り振っています。その中でも作業の中心となる、ハブスタジオがあり、主要なモデルはそのスタジオでつくっている。『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』のときは、サンフランシスコのスタジオがハブスタジオになっていました。モデラーはそこに4~5人いて、僕はそのグループのリーダーを任されていました。
『ハン・ソロ』の場合は、主にミレニアム・ファルコンのような大きな乗り物を作っていました。別のスタジオではちょっと小さめのモデルを作るとか役割分担があります。例えばスピードバイクが5~6台出てくるのですが、「バンクーバーではそのうちの〇台」といった感じで分担していきました。
ただ僕はサンフランシスコのリードなんで、ほかのスタジオに助言などはしますが、全体の人数までは把握はしていません。
――ところで成田さんは、日興証券から、映画のモデラーに転身したそうですが、その経歴がユニークですね。
僕はいわゆる証券マンではなくて、証券会社のITエンジニアとして働いていました。ただニューヨークにいた最後の3年だけはニューヨーク駐在事務所の所長ということで証券業務もやっています。主に管理業務だったんですけどね。
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