「スター・ウォーズ」が善悪を線引きしない理由 万国共通の「哲学の教科書」としての醍醐味
善悪の境界があいまいになっていく『帝国の逆襲』
スター・ウォーズの中で最も人気が高いのはなんといっても『帝国の逆襲』だろう。
それはなぜか。まずシリーズで唯一といっていい、バッド・エンドの作品であることが挙げられる。ルークは手を切られ、ハン・ソロは炭素冷凍されてしまう。
観客は必ずしもハッピーエンドを好むわけではなく、スター・ウォーズは世間で思われているほど、勧善懲悪の物語ではないのだ。
『シスの復讐』もハッピーエンドではないし、『帝国の逆襲』よりもさらに悲劇的だ。だが『帝国の逆襲』のほうが、善悪が混沌としている印象が強い。
この作品を魅力的にしている理由の1つが、善でも悪でもなくその中間で揺れ続ける人物像、ルーカス自身が敵でも味方でもない「中間人物」と位置づける人物たちだ。現実世界にもいそうな、人間味のある存在という言い方もできる。
スター・ウォーズの初期作品はダース・ベイダーという「完全悪」と、ルークという勇敢でしかも肉体の罪を拒絶するかのようにセックスアピールもほとんどなく、純粋な魂を持つ「完全無欠」の勇者を主人公とし、そのコントラストを強調してきた。だが『帝国の逆襲』では、善悪の境界があいまいになっていく。
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