「スター・ウォーズ」が善悪を線引きしない理由

万国共通の「哲学の教科書」としての醍醐味

『スター・ウォーズ』が世界中の人たちをひきつける理由とは(写真:AP/アフロ)
いよいよこの冬、公開されるシリーズ最終章『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』を待ちわびるファンも多いだろう。1977年に始まったこのシリーズ作品は、なぜ、ここまで世界中の人たちをひきつけ、絶大な影響力を持っているのだろうか。
その登場人物や、誰もが知っている名場面や名セリフをもとに哲学的な命題を考えようと試みたのが、フランスで人気の哲学者、ジル・ヴェルヴィッシュだ。彼の近著『スター・ウォーズ 善と悪の哲学』より、表題である“善と悪”についての考察をピックアップする。

善悪の境界があいまいになっていく『帝国の逆襲』

スター・ウォーズの中で最も人気が高いのはなんといっても『帝国の逆襲』だろう。

それはなぜか。まずシリーズで唯一といっていい、バッド・エンドの作品であることが挙げられる。ルークは手を切られ、ハン・ソロは炭素冷凍されてしまう。

観客は必ずしもハッピーエンドを好むわけではなく、スター・ウォーズは世間で思われているほど、勧善懲悪の物語ではないのだ。

『シスの復讐』もハッピーエンドではないし、『帝国の逆襲』よりもさらに悲劇的だ。だが『帝国の逆襲』のほうが、善悪が混沌としている印象が強い。

この作品を魅力的にしている理由の1つが、善でも悪でもなくその中間で揺れ続ける人物像、ルーカス自身が敵でも味方でもない「中間人物」と位置づける人物たちだ。現実世界にもいそうな、人間味のある存在という言い方もできる。

スター・ウォーズの初期作品はダース・ベイダーという「完全悪」と、ルークという勇敢でしかも肉体の罪を拒絶するかのようにセックスアピールもほとんどなく、純粋な魂を持つ「完全無欠」の勇者を主人公とし、そのコントラストを強調してきた。だが『帝国の逆襲』では、善悪の境界があいまいになっていく。

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