吉岡:なるほど。確かに、やらなければならないことの中から、本当に自分に向いていることが見つかることもありますよね。そういう意味で言うと、「自己分析」というのも問題だと思います。自分を発見することにもつながりますが、往々にして「私はこういう人間だ」「僕はこれがやりたいんだ」と、自分を限定する作業になっているのではないでしょうか。
辻:おっしゃるとおりで、働いたことのない学生が考えるのだから、視野が狭くなっていくのも無理はないです。
吉岡:学問も、最初は大変だけれど、続けると面白くなる。仕事もたぶん同じで、最初は興味がなくても、続けることで面白くなり、自分に向いているということがわかるのではないでしょうか。
人事部の人は、本来はそのような「目利き」の能力を持っているべきでしょう? それを、学生の「やりたいこと」だけに着目するのだとしたら、貴重な「原石」を見逃してしまい、結果的に大損失ではないかと思ってしまいます。
辻:手厳しいですが、おっしゃるとおりだと思います。そのためにも、学生の「やりたくないこと」の代表である学問への取り組みを見るツールとして、成績表がもっと一般化してくれるといいのですが。
吉岡:そうですね。ただ、最後に言わせていただきますが、本学の学生はよく勉強していますよ。図書館の利用人数も非常に多いし、みんなまじめに勉強しています。「世界でいちばん勉強しない」大学生と言われますが、環境と機会を整え、刺激的な授業をすれば、学生は勉強するのです。事実、若い人が内向きになっていると言われていますが、本学ではこの10年間で留学する人が5倍に増えたりしていますから。
辻:日本中の大学がそうなれば、私の活動は必要ないのかもしれませんね……。本日は、ありがとうございました。
吉岡:ありがとうございました。
(写真:梅谷 秀司)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら