外資初、「HP」がPCシェア首位を奪取した理由 「Windows 7」サポート終了特需だけじゃない
そこでアメリカ政府は現在、サイバーセキュリティに関するルール作りを安全保障政策と一体で進めている。アメリカ国防総省は現在、取引企業に対して米国立標準技術研究所(NIST)が定めるサイバー防衛ガイドライン「NIST SP800-171」の順守を義務づけている。日本のセキュリティ対策の主流は脅威の特定と防御までだが、このNISTの基準は脅威の「侵入」を前提としているのが特徴だ。
ガイドラインは、国家機密ではないが、国防や競争戦略上重要な情報を扱う企業が対象だ。重要情報へのアクセス制御や情報の暗号処理、組織的な管理策など100項目以上の要件を満たせない企業は調達先から締め出される。日本の防衛省も、2020年度以降に改定を予定する調達基準を、国防総省と同水準にする方向とみられる検討している。
基準厳格化はほぼすべての民間企業が対象
この基準は直接政府と取引する企業だけではなく、1次、2次、3次のサプライヤーにも求められ、ほぼすべての民間企業が対象になる。自動車や航空機の製造には何万もの企業が関わり、仕様書や設計データなどさまざまな情報がやり取りされる。防御が手薄な中小の取引先がサイバー攻撃にさらされた場合、重要情報が流出しかねない。
HPはこうした動きを商機と見る。「PCを調達する際の仕様書にセキュリティに関する要求が盛り込まれることも増えている」(九嶋氏)。これまで同社が開発してきたセキュリティ関連技術の多くは、業界初だったり、NISTの標準になったりしている。
とはいえ、ウィンドウズ7のサポート終了特需後は成長は鈍る見込みだ。岡社長は、「来年2~3月には成長率は落ちると思う。ただ今年はいろいろなお客さんに買ってもらったので、顧客基盤は広がった。今回発表した軽量の製品やセキュリティのサービスなど、新たなビジネスを育てたい」と語る。
長く高いシェアを維持してきた富士通やNECのPC事業は今や中国のレノボグループ傘下だ。東芝は昨年、PC事業を台湾・鴻海精密工業傘下のシャープに売却した。日系メーカーが続々PCから手を引く中、着実に力を伸ばしてきたHPの勢いはどこまで続くか。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら