意識高い系の学生にありがちな失敗である。キャリア意識が強いあまりに自分を客観的に見られなくなり、「自分は経営層に目をかけられてしかるべきのコア人材だ」と考えてしまう。平林さんは、製造部門に配属されて活躍している若い女性社員がどれぐらいいるのかを調べもせずに、ホンダに飛び込んだのだろう。自分だけは特別扱いしてもらえるという甘い見通しを抱いて……。
「エリート意識が強すぎたのだと反省しています。転職活動には本当に苦労しました。相変わらずメーカー志望でしたが、新卒入社のメーカーを実働5日で辞めた女を採ってくれる会社なんてありません。半年間で70社ぐらい落ちました。私の経歴を理解してくれたのはなぜかコンサル業界だけでしたね」
デロイトトーマツで飛躍!
まったく志望していなかったコンサルティング会社のデロイトトーマツに入社すると、水を得た魚のように活躍することができた。希望どおりに自動車部品会社をはじめとするメーカー案件を担当。ホンダでの研修経験も大いに生きた。よき上司とも出会い、辞めるのが惜しくなったほど仕事にのめり込んだ。転職してあっという間に丸4年が経ち、30歳を過ぎていた。5歳のときから思い続けた「家業を継ぐ」ときがやってきたのだ。
「昨年の春、家業の会社に入社しました。うちの会社は毎年、社員の家族も連れて旅行に行っているので、顔見知りの社員も多いのです。2年前ぐらいから『お嬢さんが入社するらしいよ』とうわさになっていたみたいですね。ずっと前のめりで頑張ってきた私ですが、今はあえてガツガツ感を消しています。しばらくは様子見ですね」
気負い過ぎて失敗してしまった新卒入社での経験が、ここでも生きている。平林さんは、「自分のキャリア構築」から「社会の中でうちの会社はどんな存在なのか。どうあるべきなのか」といったテーマに関心が移ってきたのも感じている。
「仕事において自分のことを考える時間は少なくなりました。社員旅行を続けていけるように継続的に稼がなくては……、などと考えることのほうが多いですね。うちは顧客対応で深夜に出社することも多いので、奥さんから浮気を疑われないためにも、旅行などを通してご家族に会社の様子を知っておいてもらうことが大切なのです。毎年の旅行を楽しみにしてくれている人も多いですしね」
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