坊ちゃん経営者に対して抱く違和感
もうひとつの心境の変化は、跡継ぎ経営者の会合に参加し始めたときに訪れた。競争とは無縁で大事に育てられ、接待があれば平日でもゴルフに行くような雰囲気である。わが身ひとつを武器にして働きまくるコンサルタントやベンチャー社員とは文化がまったく異なる。
「正直言って、ザ・坊っちゃんだらけです(笑)。出身校の話になって慶応だと伝えると、必ず『ああ、下から(の内部進学)ね』と言われます。まさか大学受験しているなんて思われません。こんなに頑張って来なくてもよかったんだと今さら思います。経営者になるには最低でも男の優秀層に入らなくちゃいけないと思って、ゼイゼイ言いながら走って来たのに……」
女性リーダーの台頭を予感させるようなエピソードである。幼い頃、男社会に染まり切った大人たちから「女の子に経営は無理だ」と言われ、それでもあきらめられずに頑張りすぎるほど頑張ってきた。気がつくと、情熱も能力も経験も誰にも負けないような若手経営人材になっていた。肩の力もいい感じに抜けて、家業経営という舞台も用意されている。数年も経てば、周囲が見る目も変わってくるだろう。
「取引先や銀行の人にあいさつすると、最初は『ああ、お嬢ちゃんが会社に入ったのね』という態度をとられます。でも、話の途中で私がデロイトトーマツでコンサルタントをしていたことがわかると、『ええっ?』と複雑な表情をします。ちょっと面白いですよ」
仕事に関しては腰が据わりつつある平林さん。プライベートはどうなのかと聞くと、「私の恋愛狂騒曲を聞いてくれます?」と返してきた。恋愛狂騒曲……。冒頭の「モト冬樹」に加えて、昭和なセンスに親しみが湧く。
ここでは詳しく書けないが、平林さんは4年間同棲をして婚約もしていた恋人2年前に別れた経緯がある。後半の2年間はずっと「マリッジブルー」で、別れてから1年後には女性としての自信がなくなるほど気持ちが落ち込んでしまった。寂しさもあり、新たな出会いを求めて都内のシェアハウスに転居した。
「破談からのシェアハウスですか! 僕もまったく同じです! どこのシェアハウスですか? 僕はですね……」
再び身を乗り出してくる編集の伊藤くん。もうしばらく静かにしていてほしい。
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