そうこうするうちに、利用される場面も爆発的に広まっていった。バイク、スカイダイビング、水泳、自転車などのスポーツはもちろんのこと、コンサート、ものづくりの現場、動物の視点から見た世界などでゴープロが使われる。ギタリストの指さばき、動物が走るときの息づかいなど、ゴープロがあるからこそ可能になった方法で世界がとらえられることにより、われわれの知識も大きく広がったのだ。
アクシデントすら、好奇心を満たす種になった。たとえば、小型飛行機で上空からの撮影に使われていたゴープロカメラが誤って落下。カメラは、クルクルと回りながら空を撮影し続け、ついに着地した農場では、カメラを食べようと腐心する豚の口の中が、ビデオ画像に残されていたということもあった。
要は、ただのカメラであるのにもかかわらず、ちょっとした工夫のおかげで、使う人々のクリエーティビティを刺激し、未知の世界を見たいと待ちわびる人々の好奇心を満たし、今や独自のメディア世界を作り上げてしまったのが、ゴープロと言えるだろう。
映画のような起業までのストーリー
そのちょっとした工夫とは、実はカメラを身体に固定するためのストラップだった。それこそがゴープロが生まれたきかっけだ。
ゴープロを開発するウッドマン・ラボは、2002年にニック・ウッドマンが創設した会社である。ウッドマンは、大学でビジュアル・アートを学んだ後、起業ブームに乗ってマーケティング会社を創設。ところが、2年ほど経ったところで、折からのドットコム・バブル崩壊の波を受けて失敗、投資家から集めた400万ドルもの資金をフイにしてしまった。
次に何をしようかと思索するための旅に出たウッドマンは、その後の5カ月をオーストラリアやアジアで過ごした。サーフィンを楽しんでいたその間に思いついたのが、カメラを腕に固定するストラップだった。
当時のサーフィン仲間は、自分のアクションを写真に収めようと、使い捨てカメラを腕にくくりつけたりしていた。だが、波の衝撃で外れてしまい、それが身体にあたることもあった。これを改良できないか。
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