「家族を想うとき」に見るフランチャイズの問題 映画から読み解く個人事業主が抱える苦悩

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映画『家族を想うとき』では、フランチャイズのシステムによって過酷な労働状況に追い込まれる個人事業主の姿がリアルに描き出されています(写真:ロングライド提供)

名匠ケン・ローチ監督が引退を撤回してまで撮影に臨んだという映画『家族を想うとき』が現在公開されています。グローバル経済が加速する中、世界中で起きている働き方問題と現代家族の姿が描かれている作品で、映画の主人公はフランチャイズの個人事業主。フランチャイズといえば、セブン‐イレブン・ジャパンにおいて、アルバイトなどに支払う残業代の一部が未払いであった問題が波紋を呼んでいます。

理不尽なシステムに振り回されて

映画の舞台はイギリスの地方都市。ここに暮らす主人公リッキーは、妻と16歳の息子、12歳の娘の4人家族。これまで職を転々としてきましたが、マイホーム購入の夢をかなえるために、フランチャイズの宅配ドライバーとして独立します。1日14時間・週6日、2年も働けばマイホームが買えると意気込みます。

一方、妻はパートタイムの介護福祉士として遅い時間まで働き、家族で過ごせる時間はほんのわずかしかありません。子どもたちは寂しさを抱え、次第にバラバラになっていく家族。そんなとき、主人公リッキーにある事件が降りかかり、物語が展開していきます。

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本作では世界で広まる新しい働き方がもたらす弊害について警鐘を鳴らしています。かつて労働といえば、企業に雇われることが一般的でしたが、近年は個人事業主やフリーランス、インターネットを通じて単発の仕事を請け負うギグワーカーなどが増加し、アメリカではギグエコノミーとして注目されています。今後も雇用によらない働き方が広がっていくと見込まれています。

主人公はフランチャイズの個人事業主ですが、それは名ばかりで理不尽なシステムにより労働を強いられ管理される過酷な状況が、映画ではリアルに描き出されています。家族の危機的な状況を救うために、主人公はフランチャイズ本部に休みが欲しいと申し出ますが、たった3日の休みさえ取ることもままなりません。

穴をあければペナルティーが科され、その挙句に働くことをやめられなくなり、家庭や健康といったかけがえのないものが侵されていくという現実。いざというときは、個人事業主だからと都合よく切り捨てられ、給与や社会保障など会社員であれば受けられる権利は何ひとつありません。

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