「家族を想うとき」に見るフランチャイズの問題 映画から読み解く個人事業主が抱える苦悩

✎ 1〜 ✎ 12 ✎ 13 ✎ 14 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

これは映画だけの話ではありません。個人事業主か雇用される立場かどうかによる違いはあるものの、長時間労働が続く日々の中で、身をすり減らして働いている人は、日本でも大勢いるのではないでしょうか。

かつて遅くまで残業することが「頑張っている」と評価され、長時間労働が日本の高度経済期を支えてきた側面は否めません。今も休みを取ることがなかなかできず、長時間労働が当たり前の職場もあるでしょうし、人手不足で不本意ながらも長時間労働をせざるをえない人もいるでしょう。

過労による身体への影響は、脳や心臓、精神疾患という形で現れることで知られ、最悪の場合は、過労死につながるおそれもあります。記憶に新しいところでは、2015年に電通の女性社員が過労自殺するという痛ましい事件がありました。

その後、会社は適切な労務管理をしていると思われていたところ、またしても違法残業で是正勧告を受けていたことが、今月明るみに出ました。是正勧告を受けたのは2018年度の時間外労働ですが、最長は月156時間超の残業があったといいます。これは氷山の一角で、36協定を無視した違法な長時間労働の実態は、日本中いたるところで見られます。

個人事業主といえば…

個人事業主といえば、会社員ではないので、使用者からの指揮命令を受けず、自分のペースで働くことができる……というのが本来ですが、そうとばかりは限らないケースも見受けられます。その一例が、すべてとは言いませんが、フランチャイズで働く個人事業主であり、まさに映画の主人公に見られるような状況です。

撮影中のケン・ローチ監督(写真:ロングライド提供)

フランチャイズとは、フランチャイズ本部が加盟店に対して、商標や商号の使用権、商品・サービスなどの販売権、それに伴う経営ノウハウの指導・教育などを提供し、その対価として加盟店から保証金やロイヤルティーを得るシステムを言います。

「さあ、独立して何かを始めよう」と思ったときに、すでに確立されている経営ノウハウの提供が受けられる点は安心ですし、信用もないまったくゼロの状態からスタートするよりも、強力なブランド力を背景にビジネスを軌道に乗せやすいという点で、確かにメリットがあります。

その一例が、コンビニエンスストアでしょう。私たちは知らない土地にいっても、夜であっても、コンビニの灯りを見れば、何となく安心しますし、今や生活に欠かすことのできない身近な存在です。オーナーにとっては集客面においても、また従業員を雇った際の労務管理面などにおいてもフランチャイズだからこそ得られる利点にロイヤルティーを支払っています。

一方、コンビニの24時間営業で、人手を確保できずに、オーナーが働き詰めとなって健康を害する問題なども深刻化。疲れたからといって、契約上における一定のルールがあるので、オーナーの希望で休業日を勝手に決めることはできません。本部からのバックアップはあるものの、最終的には加盟店オーナーが責任を担うことになります。

次ページ残業代の一部未払いが問題に
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事