水害に恐怖した人に教えたい「流域」思考の本質 河川と下水道だけに治水を頼るなら防げない
令和元年を迎えた2019年はさまざまな出来事が起こったが、本年を振り返ったときに間違いなく重大ニュースの1つに挙げられるのが、10月12日に東日本を突っ切って各地に記録的な降水量をもたらした台風19号による大規模水害だ。71河川、140カ所で堤防が決壊、16都県の285河川で氾濫を引き起こした。
記録的な大雨に対して多くの河川が耐えられなかった。今年の台風19号に限らず、2018年の西日本豪雨、2015年の鬼怒川水害など、近年は各地で大規模な水害が相次いでいる。2020年以降、さらに警戒せねばならないだろう。
私たちはこの事実をどう捉え、今後、どう備えておけばいいのか。河川の「流域」という枠組みに注目して自然の保全や都市の防災などを研究し、鶴見川流域ネットワーキングの代表理事を務め、東京都と神奈川県を流れる鶴見川の保全活動に取り組む、慶應義塾大学の岸由二名誉教授に聞いた。
水害も土砂災害も「流域」で起こる
――台風19号がもたらした大規模水害をどうご覧になりましたか。
水害も土砂災害も基本的にはすべて降った雨の水が集まる流域という構造で起こります。基本的に雨の水は低いところに集まる。実際に水害が起きるかどうかを規定しているのは、雨そのものではなく、大雨が降り落ち川に集まり、流れ下る「流域の構造」と、人々の「居住の構造」の相関なのです。
日本には私たちの暮らしを守り、産業を発展させるうえでとくに重要な関わりを持っている一級河川が1万4000本ほど存在します。それらが、109の一級水系にまとめられている。さらに比較的流域面積が小さい都道府県が管理する二級河川、準用河川、さらには法律上は河川ではないさまざまな水路を合わせると、おそらく数十万本の流れがあるだろうと思います。
自然災害による被害軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置を表示した地図である「ハザードマップ」は、これらの河川流域のごく一部しかカバーできていません。
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