治水の5大手法が「簡単だからこそ」難しいワケ

それぞれの河川、時代で最適を選ぶしかない

長野県千曲川流域の浅野付近、堤防決壊で浸水した地域と間一髪だった地域が分かれた(写真:アジア航測、朝日航洋)
台風19号が東日本にもたらした大雨は71河川135カ所の堤防を決壊させ、各地に甚大な被害を及ぼした(10月20日11時時点、国土交通省調べ)。人間にとって生きるために必要な水が、洪水となって押し寄せると人間の命や財産を奪う水害となってしまう。今後も巨大台風やゲリラ豪雨などに備えて、各地の治水対策を進めていかなければならない。
かつて国土交通省の河川局長として治水政策を担った竹村公太郞氏(日本水フォーラム代表理事)が、治水の5大原則とそれぞれの欠点などを解説する。

洪水は自然現象である。自然現象は整然としていない。大きく人間の予測を超えて暴れまくる。その洪水に対峙するとき、人間は洪水の気ままさに振り回されてしまう。振り回されているうちに、議論は拡散し、洪水対策の原則を見失いがちとなる。

気ままで狂暴な洪水に向かう際、不動の原則を持つことが重要である。そして、その原則は簡潔で、明瞭でなければならない。

大原則は「水位を下げる」の1点

「治水の原則」は「洪水の水位を下げる」。この1点である。

洪水の水位を10cm、いや2cmでも1cmでも下げる。それが治水の原則である。

この治水の原則は、簡単で、ぶれがない。簡単でぶれないからこそ、この原則から多様な治水の手法が生まれていく。

ただし、多様な治水の手法には厄介な問題が内在している。

すべての治水の手法は、長所と短所を持っている。絶対的に正しい治水の手法などない。

それぞれの河川で、それぞれの時代で、治水の原則に立ち、よりよい治水の手法を選ぶしかない。

手法1)洪水をある場所で起こし、川の水位を下げる

最も原始的な手法は、ある場所であふれさせることである。ある場所で水があふれれば、そこから下流の洪水位は下がる。

この治水効果は絶大である。古い時代から、世界中で用いられていた。日本でもこの手法は多用された。

21世紀の今でも、中国の淮河(ワイガ)ではこの手法を使っている。2003年の洪水時、堤防を爆薬で爆破した。土地利用の低い地域を洪水で起こさせ、土地利用の高い下流地域を守った。

この手法は簡単で、効果は絶大である。しかし、決定的な欠点を持っている。

社会的強者のために社会的弱者が犠牲になる点である。現代の日本社会で、この手法は合意を得られない。

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