治水の5大手法が「簡単だからこそ」難しいワケ それぞれの河川、時代で最適を選ぶしかない
河川の切り替えと呼ばれたり、放水路と呼ばれたりする手法である。
河川を切り替えて、洪水を他へ誘導してしまう。そして、川の水位を下げて沿川の土地を守る。大都市の東京や大阪も、川を切り替えることによって守られている。
この手法の効果も絶大で、河川の水位は低くなり、安全性は一気に高まる。しかし、これも重大な欠点を持っている。
河川の流れを向けられた地域が脅威にさらされる
河川の流れを向けられた地域は、洪水の脅威にさらされてしまう。
江戸時代の利根川の切り替えで首都圏域は守られたが、利根川下流の茨城、千葉は何度も繰り返し洪水被害を受けることとなった。
そのため21世紀の今も、利根川の下流部を守るため3カ所の国直轄の河川事務所が治水事業を継続している。
川幅を広げれば、洪水の水位は下がる。
川幅の拡幅は、地先の水位を下げるだけではない。上流一帯の水はけをよくする効果がある。
しかし、この治水手法にも難題がある。河川拡幅には、川沿いの土地を必要とする。日本各地のどの川沿いの土地も、何百年もかけて血と汗で開発してきた貴重な土地である。
河川拡幅ではその貴重な土地を潰さざるをえない。潰される土地の所有者の合意を得ることは至難の業となる。
この手法は、貴重な土地を守るために、その貴重な土地自身を潰すという自家撞着に陥ってしまう。
この手法は説明する必要がないほど簡単だ。川底を掘れば水位は下がる。当たり前だ。
この川底を掘る工事は、川の中で行われる。放水路や川幅拡幅のように新たな用地を必要としない。近代の日本社会で、用地の心配がない公共事業はこの浚渫(しゅんせつ)ぐらいだ。
浚渫は洪水の水位を確実に下げ、かつ、用地の心配はない。これはおいしい話だ。
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