俺たちの「大戸屋」が変わってしまった理由 ランチ迷走で自滅、外食大手が買収に意欲

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客数が20カ月連続前年割れで、ついに中間期赤字に陥った大戸屋HD。自身による処方箋はなかなか見つからない(記者撮影)

定食チェーンの「大戸屋」を展開する大戸屋ホールディングスの業績が悪化の一途をたどっている。11月13日に発表した2019年度中間期決算(2019年4~9月)では、売上高が前年同期比3.3%減の123億円、本業の儲けを示す営業損益は1.9億円の赤字(前期は1.1億円の黒字)となり、2001年の上場以来初の赤字に転落した。

中間期の不振を受け、2019年度通期(2019年4月~2020年3月)の業績見通しも下方修正した。売上高は250億円(前年同期比2.8%減)、営業利益はちょうどゼロ(同4.1億円の黒字)を見込む。

文字どおり「右肩下がり」の業績となっているのは、客数の減少に歯止めがかかっていないからである。大戸屋の既存店の客数は2018年4月から20カ月連続で前年割れの状況が続く。その客離れを起こした要因の1つが「値上げ」だ。

720円ランチを廃止した「誤算」

この20カ月間に大戸屋は、3度の大規模なグランドメニューの改定を行っている。そのうち2018年7月と2019年4月のメニュー改定で、メニュー単価を引き上げた。店舗で働くアルバイトの人件費や食材費の高騰を吸収するためだ。メニュー改定によって客単価は3~4%(20~30円程度)上がったものの、その上昇幅よりも客数の落ちこみ幅のほうが大きく、コスト増を吸収できなかった。

とくに今年4月のメニュー改定では、当時720円(税込み)で最も単価が低く、人気メニュー3位だった「大戸屋ランチ」を、低採算を理由に廃止した。すると、大戸屋のお客様相談室やTwitterなどのSNS上に多くの苦情が寄せられ、常連客の離反を招く一因になったようだ。

前期に起こったことだが、ほかにも自滅した要因がある。とくにダメージが大きかったのが”バイトテロ”。今年2月、りんくうシークル店(大阪府泉佐野市)のアルバイト従業員が裸の下半身を店のトレーで隠す動画を拡散。これによるイメージの低下、再発防止のための従業員教育にあたり、3月12日、全店を丸1日休業したことが響いてしまった。

外部環境悪化も追い打ちをかけた。サンマの記録的な不漁によって、2018年は9月から販売した「生さんまの炭火焼き定食」を、今年は10月からの販売に後ろ倒しせざるをえなかった。こうした売り上げ機会の損失に加え、関東地方を直撃した台風19号による店舗休業も痛手となった。

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