俺たちの「大戸屋」が変わってしまった理由 ランチ迷走で自滅、外食大手が買収に意欲

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度重なる値上げが客離れを引き起こしたと判断した大戸屋は、一転、今年10月の消費増税に合わせたメニュー改定で、全32品のうち4品の税込み価格を据え置いて実質値下げし、ほかの4品を税込みでも値下げに踏み切った。大戸屋ランチも790円(税込み)にし、半年足らずでメニューを復活させたのである。メニュー改定の際の記者会見で、大戸屋ランチを一度は廃止したことについて、大戸屋の山本匡哉社長は、「とんでもないことをしてしまった」と打ち明けた。

ただ値上げをやめたとはいえ、競合の定食チェーンと比べると、なお割高感は残る。大戸屋のメニューは800円~900円台が中心なのに対し、プレナスが運営する「やよい軒」は、100円ほど安い700円~800円台のラインナップを提供する。

ランチ定食は720円が一度廃止され、790円として復活したが…(写真:大戸屋HD)

ランチ需要に限れば、テンアライドの運営する居酒屋「テング酒場」も500円~600円台の定食を販売し、東京都心のオフィス街などでにぎわっている。やよい軒やテング酒場は、ご飯やみそ汁のおかわりを無料で提供し、ボリュームを求める男性客の支持も高い。

やよい軒やテング酒場が安くてボリュームのある定食を出せるのは、セントラルキッチンで効率的に調理し、加工度の高い状態で食材を店舗に運んでいるからだ。対して大戸屋は、セントラルキッチンを持たず、店内調理にこだわっている。

セントラルキッチンでなく店内調理が武器

野菜や肉などは各店舗でカットし、焼き魚の定食など、前日からタレに浸して仕込んでおくものもある。そのため店舗運営にかかる人手も多く必要で、開店前にも仕込み作業を行うための労働時間がかかる。競合と比べて価格帯が高いのには、こうして人件費がかさんでいる背景がある。

価格差が生まれているのは店内調理に人手をかけているからだが、消費者にはうまく伝わっていない。大戸屋にもやよい軒にもよく行くという埼玉県のある20代女性は、「大戸屋が店内でイチから調理しているのは知らなかった」と語る。

大戸屋としては店内調理が魅力のはずだが、常連の顧客にすら浸透は薄い。競合と差別化する最大のポイントがうまく認知されていない状況では、値上げしては客が離れ、少し値下げしたくらいでは戻ってこないのも当然の結果といえる。価格ではなく商品力で勝負するべきところを、商品力をアピールしきれておらず、価格で顧客が動いてしまっている。

人件費がかさむ店内調理の工程を少しでも軽減しようと、対策も講じていないわけではない。今年4月のメニュー改定では、同時にオペレーションも見直し、より調理作業の負担が軽いメニュー構成にした。また11月26日の決算説明会では、大戸屋ホールディングスの窪田健一社長が「カット野菜でも店内で仕込んだものと品質が違わないのであれば、考えていきたい」と、カット済み野菜の導入を検討していることを明かした。

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