人口減の地方でも「マンション好調」のカラクリ 戸建て文化に変化、竣工前に完売の物件も

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マンション業界で大手の野村不動産は近年、地方都市でのマンション開発を加速させている。開発エリアの基準は新幹線停車駅があるほか、人口が20~30万人規模であることだ。

マンションにも小売店と同じように「商圏」が存在する。筆頭はマンションが建つ市区町村を中心とする人口規模で、各社は20~50万人、少なくとも10万人を一つの基準に据えることが多い。

宮城県塩釜市。中堅デベロッパーのフージャースホールディングスは4月より、この地で全63戸のマンションを販売している。廣岡哲也社長は「(塩釜市に)ほかのデベロッパーは手を出さなかった。われわれも社内で議論を重ねたが、財閥系のような大手にはできない役割があると思い挑戦した」と話す。

塩釜市の人口は、11月時点で5.4万人を切った。それでも駅徒歩3分という立地や、市内は起伏が激しく戸建てが坂の上にあることから、平地に建つマンションの引き合いは強いという。

需要が「溜まる」

同じく東北地方の秋田県横手市。中堅デベロッパーのタカラレーベンは10月に全54戸のマンションの販売を開始した。2020年6月に竣工した暁には、市内ではおよそ10年ぶりの新築となる。

マンションを開発する際、商圏と同じくらい重視されるのが、その地域にマンションの需要が「溜まっているか」だ。横手市の人口も11月末時点で約8.9万人と、やや心もとない規模ではある。それでも、過去10年間新たにマンションが販売されていないことは、逆に言えば新築マンションを欲する声が高まっている可能性もある。

事実、2011年に横手駅前に建設されたマンションは現在でも中古で取引されており、タカラレーベンはマンションに一定の需要があると踏んだ。加えて豪雪地帯である横手市は、「雪かきの苦労から解放されるために、戸建てからのマンションへの買い換え需要がある」(同社)。足元では資料請求やモデルルームへの来場といった反響も多いという。前述の塩釜のマンションも、「市内では11年ぶりの新築で、需要が溜まっていた」(フージャース)。

マンションは自営業者や公務員、士業など地方都市に住む高所得層からの引き合いが強い。その地域で有力な企業を経営する「地元の名士」たちからは、中心部にそびえたつマンションを持つことは一種のステータスであり、最上階の1億円超えの部屋が真っ先に売れていくことも珍しくない。

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