人口減の地方でも「マンション好調」のカラクリ

戸建て文化に変化、竣工前に完売の物件も

他方で、マンション業界を悩ませるのが、建築費をはじめとするマンションの原価上昇だ。首都圏を中心にマンションを供給する中堅マンションデベロッパーの社長は、「ファミリータイプなら建築費だけで2700~2800万円もかかる。この数年で500万円以上も上がってしまった」と頭を抱える。人手不足がより深刻な地方都市の場合は職人を遠方から呼び寄せるコストもかさむため、首都圏同様に建築費の高止まりが続く。

それでも事業が成り立つのは、多くのマンションが「再開発」の手法を取っているからだ。大きな土地を購入してマンションを建設するのに対して、再開発は開発エリアの地権者をまとめ上げていく。建設したマンションにはもともと住んでいた地権者が入居し、残った部屋(保留床)をデベロッパーが買い取って分譲するのが一般的な流れだ。開発までには長い時間がかかるが、駅前など一等地にマンションを建てることが可能だ。

「補助金抜きには厳しい」

それ以上に魅力的なのが、再開発に対して交付される「補助金」だ。2019年1月に岡山駅からほど近い場所に完成した21階建てのタワーマンションの場合、総事業費75億円に対して21億円の補助金が交付された。エリア周辺の道路を拡幅したり、市民が自由に利用できるスペースを整備したりするなど、街づくりに協力することへの対価という位置づけだ。

冒頭の倉敷市での再開発においても、総事業費157億円のうち、71億円が国や市からの補助金だ。本来マンションは高さを積むほど事業性が高まるが、美観地区を抱える倉敷市は景観保護の観点から建物の高さ制限を設けており、マンションは10階建てが精一杯だった。再開発コンサルティングの担当者は、「再開発に対する補助金は総事業費の3割程度が一般的だが、景観条例によって事業性が限られることを考慮し、今回は4割以上交付された」と話す。

首都圏でマンションを多く分譲する大手デベロッパーのマンション事業担当者は、「地方都市では補助金抜きにはマンションを建てられない」と打ち明ける。また、通常は土地を購入してからマンションを販売するまでに2~3年はかかるのに対し、再開発では増えた分の部屋を買ってからすぐに販売に移れるため、資金回収のタイミングが早いことも見逃せない。

とはいえ、地方都市でのマンション事業は「自然災害への強さや交通アクセスを始めとする利便性が評価されている一方、需要に限界があるエリアも多く、厳格な精査が必要」(中堅デベロッパーのマリモ)。前述のタカラレーベンやフージャースも、不動産投資や公共施設の運営受託など事業の幅を広げており、売上高に占めるマンション事業の割合はかつてより小さくなっている。

地方都市でのマンション分譲で多数の実績を残してきた大京の小島一雄社長は、「マンションだけでは今後心もとない。新たなビジネスを考えていかないといけない」と危機感を募らせる。足元の堅調ぶりは、次の一手を編み出すための猶予期間でもある。

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