大塚家具、「ヤマダ傘下」で問われる存在意義 自主再建をついに断念、年明けの資金不足も
2015年の委任状争奪戦で勝利した久美子社長は、父が築いた会員制の販売モデルを廃止し、低~中価格帯の商品を増やすなど、富裕層以外に顧客を拡大するための改革を断行してきた。だが、国内の家具市場ではニトリやイケアといった自社で製造も手がけるSPAが台頭し、大塚家具は品ぞろえや価格競争力の面で見劣りが目立った。
父娘間での対立によるイメージ悪化も拍車を掛け、2016年度以降は販売不振で3期連続の営業赤字に転落した。
営業キャッシュフローもマイナスが続き、約20年にわたり無借金経営を貫いてきた強固な財務基盤も揺らぎ始めた。急減する現預金を補填するために売却を進めた有価証券や不動産も、直近ではほぼ底をついた。度重なる赤字で銀行の借り入れが厳しくなり、倒産すらも現実味を帯びる中、2018年以降はスポンサー交渉に明け暮れることになった。
経営権めぐり、膠着する出資交渉
スポンサー交渉の過程で足かせとなったのが、久美子社長の進退問題だった。ブランドの知名度と、高額品の販売スキルを身につけた営業部隊の存在に魅力を感じ、出資に関心を示す企業も少なからずあった。が、複数の元社員は「久美子社長は自身の経営権を維持するため、株式の過半を取られない形での提携を模索していた」と明かす。これがネックとなり、交渉はまとまらなかった。
一例が、2018年に浮上したヨドバシカメラによる買収案だ。大塚家具のメインバンクである三井住友銀行もお墨付きを出した本命候補だったが、ヨドバシ側が久美子社長の退任を求めたことで折り合いが付かず、破談となった。出資を断った別の企業の幹部は「久美子社長は自身が社長のままで複数社から出資してもらうことを期待したようだが、こちらで経営を指揮できる状態でないと、大塚家具の抜本的な業績改善は見込めないと感じた」と話す。
スポンサー交渉が膠着する中、救世主のごとく現れたのが、日中間の越境ECを手がける「ハイラインズ」と中国の家具販売大手「居然之家(イージーホーム)」だった。ハイラインズの陳海波社長が橋渡し役となり、日本式接客サービスの導入などに興味を持ったイージーホームは、大塚家具と資本提携を見据えた業務提携を2018年末に締結。2019年3月には、ハイラインズを中心としたファンドとアメリカ系投資ファンドから第三者割当増資で計26億円を調達した。
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