大塚家具が過去最悪の営業赤字に沈む理由 「脱・父親」路線が振るわず、崖っぷちに

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大塚家具は今期、大幅営業赤字が確実になった。父の路線を転換した狙いは外れたのか(記者撮影)

大塚久美子社長の戦略転換は“失敗”だったのか――。

大塚家具が過去最大の営業赤字を計上する見通しとなった。同社は6月3日、2016年12月期の業績予想を大幅下方修正。5億円の営業黒字予想から一転、15億円強の営業赤字(前2015年12月期は4億円の営業黒字)へと修正した。リーマンショックの影響で14億円の営業赤字に陥った、2009年12月期をも超える赤字規模だ。最終損益も6年ぶりの赤字に転落する。

大きな赤字を出すことになる要因は、何と言っても売上高が急落しているためだ。今期の売上高は前期比42億円減の538億円と、過去15年間で最低になる見込み。2016年1月から既存店の減少傾向が続いており、引越しシーズンだった稼ぎ時の3月には前年同月期比11.8%減、さらに直近の5月は「大感謝会」と銘打った集客策を実施したものの、不発に終わり、同46.2%減とほぼ半減した。

久美子社長は「1~2月は昨年末に実施した、売り尽くしの反動減が大きい。さらに店舗のリニューアル準備に加え、(新しい手法に変更後の)運用の不慣れさもある」と説明。また、2015年は5~6月に「おわびセール」で大きく売上高を伸ばしており、その反動減もあって、5月に続き、6月も大きな落ち込みが見込まれる。

テレビ露出も減っていった

新宿ショールームでは大感謝会を大々的に開いた(記者撮影)

久美子社長は2015年3月の株主総会で、経営権を争った創業者で父の勝久氏に勝利。社長に就任後、勝久氏が作り上げたビジネスモデルと決別した。象徴的だった「会員制」を廃止。誰でも気軽に入れる店舗へと順次リニューアルし、顧客に必ず付き添っていた接客手法も変更した。さらに高級家具の売り場を縮小する一方、中価格帯を強化するなど、“普通の家具店”になっていった。

くしくも2015年はお家騒動が世間の注目を集めたため、大塚家具の知名度が向上。総会後に久美子社長はバラエティ番組に頻繁に登場するなど、自らが広告塔の役割を果たしてきた。さらに勝久氏時代はほとんどなかった大規模セールも頻発。こうした効果もあり、前2015年12月期には売上高が大きく伸び、営業黒字に転換していた。

だが、リニューアルなど本格的なビジネスモデル転換が始まったのは、今年に入ってからだ。そうした意味では、新生・大塚家具への顧客支持は広がっていない。総会から1年以上経ったことで、久美子氏のテレビ露出効果も消え、大規模セールで顧客を先食いした影響も出ている。

大塚家具は下期(7月~12月)以降の回復を目指している。顧客対応のオペレーションが熟練されていくとみているためだ。ただ、古豪の社員ほど、戸惑いは大きい。これまでは最初から決められた顧客を手厚く接客してきたが、新たな運用ではセルフサービスが基本となるため、顧客に話しかけるタイミングが重要になる。

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