大塚家具が過去最悪の営業赤字に沈む理由 「脱・父親」路線が振るわず、崖っぷちに

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父・勝久氏は「匠大塚」で反撃。春日部市では娘の大塚家具と真っ向勝負をかける(撮影:今井康一)

一方、「匠大塚」という家具の新会社を設立した父・勝久氏のもとには、大塚家具から数十人規模の社員が転職してきている。しかも幅広い部署から移っており、部長など幹部級も少なくない。

その匠大塚は6月29日に、大塚家具創業地である埼玉・春日部に大規模店舗をオープンする。西武百貨店の跡地を利用し、1階から5階までの約2万7000平方メートルと、日本最大級の売り場になるという。近くには大塚家具の春日部ショールームがあり、まさに古巣と”ガチンコ勝負”となる。勝久氏は「前の会社(大塚家具)とは差別化したいと思って、違うビジネスモデルを考えた。匠大塚は全員プロだ」と自信を見せている。

これに先立って匠大塚は、東京・日本橋でも4月、高級家具のショールームをオープンした。事前予約制でプロ向けだ。大塚家具を去っても、基本は高級路線であり、会員制による接客重視という自分のビジネスモデルを貫く構えを見せており、久美子氏とは対照的だ。

株主対策で配当を倍にしたが…

もっとも大塚家具の業績がさらに悪化すれば、父・勝久氏がもう一度登場することもありえるが、少なくとも筆頭株主だった勝久氏は、断続的に大塚家具の株を放出しており、5%未満まで下がる見通しだ。そういった意味では大株主としての力はもうない。

久美子社長は就任以来、株主還元重視を掲げて、配当を2015年~2017年の3年間は倍増の年80円にする政策を実施しており、個人株主にとって大塚家具株の人気は高い。その間にビジネスモデルを転換、成長軌道に乗せる算段で、ある程度の業績低迷は久美子社長も承知のうえだったが、想像以上の大苦戦となっている。

はたして今は次なる成長への過渡期なのか、それともこのまま下落を続けていくのか。久美子社長は崖っ縁に立たされている。

冨岡 耕 東洋経済 記者

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とみおか こう / Ko Tomioka

重電・電機業界担当。早稲田大学理工学部卒。全国紙の新聞記者を経て東洋経済新報社入社。『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部などにも所属し、現在は編集局報道部。直近はトヨタを中心に自動車業界を担当していた。

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