「儲けたい」と「モテたい」は焦りが禁物な理由 「下心と恋心」は「遠交近攻」の逆説で考える

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実は、スノーピークの製品は「買い替えではなく、買い足し」というコンセプトで拡充されていきました。家族が増えてテントが手狭になっても、大きなものに買い替えるのではなく、買い足してつなげる。接合部分が標準化されているので、ユーザーは、まるでレゴブロックのように組み合わせることができるのです。

内装も同じです。テーブルにしてもいすにしても、同一規格でデザインされているので、少しずつ買い足していくことができるのです。高さもすべてそろっているので、互いに組み合わせることが可能です。これは1987年に開発されたスノーピーク・レイアウト・システム(SLS)という、画期的なモジュール規格の製品群です。買い足しやすい製品だからこそ、ユーザー同士の情報交換も活発になります。

モジュール規格の製品群によって合わせ買いを促し、一定の金額に達した人は上位ランクの会員として特典を提供する。それをきっかけに継続的な関係が生まれて、コミュニティとなる。ファン同士が互いに触発し合って、ますます売り上げが伸びるという収益の論理です。

あるいは、パターンの組み合わせとして見れば、併せ買いを促す「合計モデル」、顧客との長期的な関係を築き上げる「継続モデル」、ならびにファンがファンを呼び込む「コミュニティモデル」の結合として言い表せそうです。なんとパワフルなビジネスモデルでしょうか。

スノーピーク・山井社長に尋ねてみた

どのようにすれば、収益が上がる構造をつくれるのか。社長の山井太さんに尋ねてみたところ、ある意味で予想外の答えが返ってきました。

「快適なキャンプ生活のベースを持つために、ドームテントとタープ、キッチンリビングシステムを組み合わせてきました。クオリティー・オブ・ライフを支えるしつらえとして、これらを開発したわけです。それは、全くピュアな活動であって、まとめ買いをするために仕組んだものではなかったですね」

1990年代後半、キャンプに持って行くテントといえば持ち運びが不便で、設営にも時間がかかり、狭くて使いづらいものばかりでした。1泊2日のキャンプだと設営と後片付けに大半の時間が費やされ、十分に自然を満喫することはできません。

そこで、スノーピークはテントをできるだけ簡単に設営できるように工夫しました。コンパクトにして持ち運びが便利で、テントにタープを組み合わせて寝室とリビングスペースを分けることができます。快適なキャンプができるということでファンが広がっていったのです。

儲けるためにモジュール規格の製品群を開発したのではなく、快適なキャンプをしてもらうために開発したわけです。

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