「儲けたい」と「モテたい」は焦りが禁物な理由 「下心と恋心」は「遠交近攻」の逆説で考える
コミュニティについても同じでした。山井さんがキャンプ好きで、仲間たちと一緒にキャンプをしていった結果、その輪が広がってコミュニティが生まれたそうです。10年にも及ぶキャンパーとしての活動はブログに書き込まれましたが、これが後のSNSに育ち、コミュニティの情報交流の核になりました。
山井さんは、自分がコミュニティをつくって、それをもとに収益を上げようというようなことは一切考えておらず、ただキャンプが好きで、仲間を増やしていったということなのです。
文章にして伝えても、なかなかわかってもらえないかもしれませんが、山井さんがそう語るまなざしとそのときの空気からして、本当にそうだったのだと私は腹落ちしました。
そして今や、スノーピークのビジネスモデルは、イベントを企画してコミュニティをつくり、テントに加えてシートやタープなどの関連商品の合わせ買いを促すというビジネスモデルといえるでしょう。
しかし、このような収益を上げる仕組みは、最初から意図的にデザインしたものではありません。儲け方を一生懸命考えて「つくったもの」ではなく、顧客の困りごとに徹底的に向き合い、それを創造的に解消した結果として「できたもの」なのです。
このような話はスノーピークに限ったものではありません。グローバルに展開する公文教育研究会も、スタートアップ企業で注目されているHEROZも、「収益の上げ方」を第1に置いていません。逆に、「収益の上げ方」ばかりを気にしている人たちは、新事業がうまくいかなかったり、スタートアップとして成長できておらず、苦労していました。
収益設計のパラドックス
なぜ、儲けようとするとかえって儲かり難くなってしまうのでしょうか。その理由は、いくつか考えられますが、根本的な原因は1つです。それは、ビジネスモデルをつくる人の焦点が収益設計に集中してしまうからです。
ビジネスモデルの設計では、テクニカルな「マネタイズの方法」が話題になります。それゆえ、多くの人が「ビジネスモデル=収益を上げるためのマネタイズの方法」だと狭く理解してしまいます。そして、マネタイズの「パターン」だけを切り出して、どのパターンを自社に適用するかを議論し始めるのです。
「継続課金にすれば、収益を安定化できる」
「サービスフィーを加えて、マネタイズのポイントを増やそう」
「消耗品をつくって売り上げを伸ばそう」
はたして、このようなやり方で本当に持続的に収益が上がるような仕組みが構築されるでしょうか。ライバル他社に追随されないようなビジネスモデルがつくれるのでしょうか。少なくとも、私は疑問に感じます。
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