「モノが少ないと、快適に働ける」 【特別対談】土橋正×本田直之(上)
土橋 私の今回の本も、「モノを減らす」ということをテーマにしているんです。まず、モノが少ない方が、快適になれる。そして、身の回りに今必要ないモノを置かないようにすると、思考する際の〝ノイズ〟がなくなり、集中力が高まってくる。結果的に仕事もはかどり、非常に能率的になれる。
仕事の一部が、整理になっていないか
本田 それはその通りで、余計なものが増えると、整理する必要が出てくるじゃないですか。すると、仕事をすることの一定の部分が「整理すること」になってしまう。いつの間にか、オーガナイズ(=組織)することが仕事の目的になってしまう場合もある。それって、完全に本末転倒ですよ。
土橋 たしかにそうだね。モノが少ないと何かが必要になった時でも、すぐに手に取れる。「探す」、「選ぶ」ということがなくなり、ほんの数秒くらいかもしれないけど早くなる。きっとこのことも集中力を高める要因になっていると思う。
本田 もともとの目的というのは、いい仕事をすること。アウトプットが何よりも大事なんです。インプットやオーガナイズで、時間がとられたり手間取ったりするのは、間違っている。そうしたことを排除するためにも、余計なものはなるべく減らして、クリエイティビティのある作業にさく時間を増やすべきだと思います。今は、iPhoneやiPadといったデバイスがあるので、それらを上手く使えば、モノを減らすことができるはずですよ。
土橋 本田の『LESS IS MORE』にも書いてあったけど、引越したときに、大量にモノを捨てたらしいね。
本田 そうなんですよ。引っ越しの時に整理をして、トラック2台分のモノを処分しました。引っ越し先に持って行ったのは、元の荷物の3分の1くらい。新しい家は、元の家の1.5倍くらいだったので、開放感がすごかった。今いるこのオフィスも、隣の部屋に机とパソコンが置いてあって、そこを仕事場として使っていたんです。でも、iPhoneとiPad、それとMac Boook airを使うようになって、外で仕事をするようになってから、全然使わなくなってしまった。机も必要じゃなくなって、もう部屋自体、なくてもいいくらいになってますよ。
土橋 デスクも要らないってスゴイね(笑)。私が、モノを減らすきっかけになったのは、レンタルオフィスを利用したこと。レンタルオフィスといっても、スペースを借りるだけで、仕事の資料や道具は毎回持って行って、持って帰ってくるというスタイル。そして、デスクとイスとWi-Fiしかないスペースで仕事をしてみると、これがすごく快適だった。
次第に、持ち帰りの荷物を少なくしようという発想になって、必要なモノは何かとチェックしていったときに、結構余計なものがあることに気が付いた。そこで、かなり余計なものを減らした。その後、自分用のオフィスを借りるようになったんだけど、レンタルオフィスでの経験を生かして、置くものを徹底的にそぎ落として、今のスタイルになった。仕事道具が少ないというと、不便かと思いがちだけど、全く逆で、少ない方が仕事に集中できて仕事時間も短くできるようになった。