なぜ社会の底辺にいる人々は「見えない」のか 「7つの階級」調査が示す「貧困ポルノ」の誤り

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近年、一般に、さまざまな問題に対して世論はリベラルな態度を支持するようになっているが、それとは裏腹に、社会の底辺にいる人々へのスティグマ化[ネガティブな意味のレッテルを貼ること]は強化されている。

「スカム(くず)」とか「チャヴ」といった侮蔑的な言葉が、ソーシャルメディアで、校庭で、街の商店やパブで、そして国中至るところで飛び交っている。

こうした現象はとくに新しいものではない。社会学者のステファニー・ローラーとレス・バックは、労働者階級はまともに扱われることはまずないし、中流階級の人々からは、非常に「見分けやすい」人たちだとはじめから見なされていることが多いと主張している。

ローラーの調査によれば、労働者階級の人々は特定の階級の一員とされたことはほとんどなく、「不快な存在」として言い表されることが多い。

これは、たいていは労働者階級の人たちを表す符号として使われるシェルスーツや大きな金色のイヤリングといった、身体や服装などを標的にする見下した表現からきているのだという 。

身体、外見、振る舞い、装飾品は、貧困層を符号化する際の中心になっている。それらの符号が特定の居住空間のイメージ、とくに「公営住宅」のような言葉と結びつくと、人々は「病的に見える点を結びつけて」その状況を理解しようとする。

つまり、ある種の装いや話し方、住まいは、軽蔑される「階級であるということだけでなく、根底にある病理」をも暗示していると理解してしまうのだ。

価値のないものという決めつけ

ローラーとビバリー・スケッグスは、労働者階級の文化的活動は「悪趣味」と評価されるだけでなく、病的であると決めつけられ、非道徳的で正しくない犯罪的なものとして符号化されていると強く抗議している。

これは、労働者階級は一般に、プレカリアートの場合はとくに、文化を「持たない」とか、「まともな」水準に達した文化を持たないと決めつけられているという状況につながっている。

スケッグスは、このようなスティグマ化の結果、貧しい労働者階級を価値のないものとして改めて決めつけることは、新しい形態の階級差別化を生み出す文化やメディアを通じて、新たな搾取の方法を作り出す元になっていると主張している。

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