なぜ社会の底辺にいる人々は「見えない」のか 「7つの階級」調査が示す「貧困ポルノ」の誤り
社会の最下層の階級を突き止めることは、その階級の人たちに烙印を押す行為に加担するリスクを冒すということだ。確かに、英国階級調査自体が社会の最下層の人々をさげすむ効果を持つ策略に加担してしまっていた。階級算出装置のパロディーがいくつも作られたことは、私たちの調査が下層階級への嫌がらせに利用された証左だと言える。
英国階級調査が憎悪の渦に巻き込まれた事実は、階級分類と他者をおとしめたいという動機が結びつく力を、強烈に明らかにしている。
プレカリアートたちの置かれた状況
プレカリアートの人々は、自分がいる世界がどんなところであるかよく「わかっている」。とはいえ、彼らは自分たちが他人の定義や決めつけを受ける側にどんなふうにしてその立場に置かれるのか、それもまたわかっている。
このような構図が、都会で貧しく暮らす人々の生活に影響を与えている。公営住宅が残るロンドン東部を社会学の研究のフィールドにしているリサ・マッケンジーは地元の人々に話を聞くために、よくパブに足を運ぶ。店内は重苦しく、気が滅入るような雰囲気に包まれている。
パブにいる人々の多くは、雇用形態は自営業ということになっているが、ロンドンの建築現場で働く、身分が不安定な下請けの労働者だ。
女性たちもパートタイムで働いている。地元のパブやすぐ近くの金融街のオフィスの清掃などが仕事の一例だ。高騰する家賃の支払いのために福祉の補助金に頼り、低所得のために税金の控除を受ける人も多い(これは実質的に減少の一途をたどっている)。
女性たちの状況も男性たちと同様に不安定である。このような不安定な生活をしている人たちはイギリス全土に存在する。ノッティンガムでは、貧しい女性や子どもたちが崩壊寸前の公営団地に住んでいる。そこではあらゆる生活資源が不足している。
図書館や、貧しい子どもたちの健康や教育を支援する「シュア・スタート」センターやコミュニティセンターの閉鎖も珍しくはない。買い物をしたり、集まったりする場所も限られている。
あるのは、古びた郵便局や食料雑貨のほかに宝くじや安酒などを売る小さな商店だけだ。イングランド中部や北部の都市や町の公営団地から聞こえてくるのは、そんな荒れ果てた現状ばかりだ。
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