アマゾン運営「仕事サイト」の過酷すぎる実態 メカニカル・タークを使って働いてみた
アマゾンは、ターカーが稼いだなけなしの金の一部も巻き上げようとしている。かつて鉱山労働者が会社経営の店でしか使えない金券で給与を支給されていた時代を思い起こさせるような話だ。アメリカのターカーであれば報酬は銀行口座に振り込まれるが、外国のターカーはアマゾンのギフトカードでしか報酬を受け取ることができない。
アメリカ国内ではアマゾンは、従業員すべてに時給15ドル以上を保証しており、最低賃金の引き上げにも前向きだ。ところがターカーの報酬に関するルールなどメカニカル・タークに関するあらゆる点に関しては、いくらコメントを求めても応じようとしない。ちなみにメカニカル・タークの仕事のような請負仕事は最低賃金を定めた法律の適用外だ。
メカニカル・タークは「クラウドワーク」や「マイクロワーク」と呼ばれる分野を代表するサイトの1つだ。ちなみに主に学術研究目的で利用されている同業他社のプロリフィックは1時間あたり6.50ドルの最低賃金を定めている。
労働者階級の厳しい生活へ逆行している
タスクを生み出す側とタスクを請け負う側の需要と供給が交差する場所で出会う労働市場、そこには国境もなければ余計な管理費用もいらない――そんな輝ける未来をこの分野に見る人もいる。逆に、規制と説明責任の欠如が原因で労働者が闇の中で追い詰められているとの批判もある。19世紀の英作家チャールズ・ディケンズが描いたような労働者の厳しい生活への逆行だというわけだ。
とりわけメカニカル・タークでは、単発の仕事を請け負ういわゆる「ギグワーク」の危なさや不安定さに、大手テクノロジー企業にありがちな責任逃れの姿勢が組み合わさってしまっている。
「あらゆるルールを取り去って報酬が最底辺まで落ちたらどうなるかを示す見事な縮図だ」と、労働条件の改善を訴える活動をしている元ターカーのクリスティ・ミランドは言う。ミランドは前述の論文の著者の1人でもある。
ちなみに最底辺というのはまさに、私が短期間、ターカーとして働いたときの報酬のレベルだ。建設現場を写した監視カメラのようなぼやけた写真を見て、労働者たちがヘルメットやハーネスを付けているかチェックするタスクは、写真1枚当たり1セント。
架空の事故で受けたケガについて説明する(『芝刈り機に欠陥があったせいで勝手に動き出し、私は重傷を負った』という感じの)というタスクもあった。これは法務の補助を行うコンピュータープログラムを訓練するためのものだったが、送信ボタンが一向に画面に現れず、1セントにもならなかった。
自分が「積極的な投資家」になったつもりで、キックスターターで支援を募集している「ナッツミルクを作る道具」について評価すると言う仕事もあった。
9月の数週間にわたったターカー体験で、私は221件のHITをこなした。要した時間は8時間強で、稼いだ額は合計7.83ドル。時給にして97セントという計算だ。